「i-Café」カテゴリーアーカイブ

i-Café:『明治伊万里について』

日時:9月24日(日)13.00からZOOMで開催
講師:蒲地孝典さん(佐賀有田在住会員)
演題:『明治伊万里について』

2) ご出講のきっかけ

①2018年11月当会佐賀旅行
蒲地さんには3年前に二泊三日で実施した当会佐賀旅行の現地手配・案内ですっかりお世話になった。その際蒲地さんが30数年来手掛けて来た海外に流失していた明治有田焼の里帰りや復刻版プロデュースの成果を見せていただき、柿右衛門、古伊万里から発展した「明治伊万里」の素晴らしさを実感した。

②2021年9月30日付日本経済新聞記事
その蒲地さんから、『9月30日の日本経済新聞文化欄に「和魂洋才 明治伊万里の粋◇米英などまぐり2万点を30年かけて里帰り 復刻版プロデュースも◇」を書いた』と、下記の内容の事前予告メールが来た。間髪入れずに翌月24日のi-Cafeご出講をお願いし、快諾を得たのは幸いだった。

『みなさん 小生のライフワークである「明治伊万里」について雑文を寄稿しました。明治の有田焼は廃藩置県以後、藩の庇護を受けないので自ら活路を見出さなければなりませんでした。
慶応3年のパリ博に出品して多少手応えを感じて、輸出に活路を求めます。佐賀藩出身の大隈重信、佐野常民をはじめ要路で活躍する人達は有田焼支援のために一肌もふた肌も脱ぎました。とりわけ、久米邦武は父が皿山代官でしたので幼い頃より有田には何度も通い、人的交流も深かったのです。回覧実記の中の陶磁器に関する記述にはただならね久米の思いが詰まっていることは皆さま周知の事です。
この明治伊万里が改良改善を進めて、欧米のマイセンやサーブルなどを凌駕して、世界の万博で高く評価されたことを日本人はほとんど知りませんでした。その明治伊万里の評価を認識させる為に収集や復刻版製作の活動をしているところです。その思いを綴っています。蒲地孝典』

3) 当日の蒲地さんのお話
柿右衛門や江戸時代には無い新たな技術・手法をこらし、海外で珍重された明治伊万里の逸品の数々を鮮明な写真でご紹介いただいた。説明されなければ気が付かない細かな浮彫など複雑で気の遠くなるような手が施されている作品には圧倒される。

また、有田焼が佐賀藩の重要な輸出産業であったこと、久米邦武の父親が有田焼の製造・販売・輸出を管理する皿山代官で久米も香蘭社の設立に関わるなど有田焼の振興に深くかかわっていたことを教えていただいた。米欧回覧実記の各国製陶所訪問記が詳細な理由が分かった。

蒲地さんは人生の過半を明治伊万里の復興に捧げて来たが、最盛時は英国に年間120日滞在し、骨董店を隈なく廻る他、有名オークション・ハウスの競りにも参加し高額の逸品のセリ落としにもチャレンジして来た由。ウィーン万博に出品されていた背丈を上回る大花瓶の前に英国美人と写っている若き蒲地さんはダンディーで、まさに『誇り高き日本人』だ!

4) 質疑応答・懇談
①佐賀旅行を企画した小野さんや同行した塚本さんに佐賀の歴史、唐津くんち、料理等について語っていただいた。
②仙台からご参加の鈴木さんは仙台藩の切込みには有田の技術が込められていること、宮中で使用される有田焼に仙台藩の紋様が使われているなど珍しいお話をいただいた。
③9月米欧回覧実記輪読会でフランスのセーヴル製陶所訪問部分を報告していた冨田さんに、その日のパワーポイントを使ってご説明いただいた。
④他の参加者からも大変活発な質疑・ご感想をいただいた。

5) 余興
①鉄道唱歌に歌われている有田焼をi-Café Singersの録音で披露
鉄道唱歌第二集~山陽・九州線第59番に有田焼と武雄が出てくる。『つかれてあびる武雄の湯、土産にするは有田焼、めぐる車輪の早岐より、右にわかるる佐世保通』

②フィナーレは『青い山脈』大合唱
佐賀旅行の最後、唐津くんちの夜の宴会の最後に、期せずして大合唱となった思い出の歌『青い山脈』を、吉原さんにご用意いただいた昔の映画を映しながら、みんなで歌い幕となった。

(岩崎洋三記)

 

i-Cafe:『ウィーンに六段の調べ~ブラームスに箏を聞かせた岩倉具視の娘』

日時:2021年7月25日(日) 13:00~15:00
場所:ZOOMによるオンライで開催

第55回のi-Caféは、音楽評論家萩谷由喜子さんをお招きして、『ウィーンに六段の調べ~ブラームスに箏を聞かせた岩倉具視の娘』と題して興味深いお話を、琴の生演奏を交えながらお話いただきました。

女性音楽史や日本のクラシック音楽受容史に造詣が深い萩谷さんには、二年前のi-Caféで、ご著書『蝶々夫人と日露戦争~大山久子の知られざる生涯』に基づいて、イタリア駐在外交官夫人大山久子がプッチーニに日本の歌を紹介し、それがオペラ『蝶々夫人』に取り込まれたとの興味尽きないお話をお伺いしました。

二回目の今回は、岩倉使節団派遣150周年に合わせて本年6月に中央公論新社から出版した『ウィーンに六段の調べ~戸田極子とブラームス』に沿ってお話しされました。岩倉具視の娘極子が嫁いだ最後の大垣藩主戸田氏共は、明治20年オーストリア・ハンガリー特命全権公使としてウィーンに赴任、その折ブラームスの所望で極子が、箏曲「六段の調べ」を面前演奏したとのお話でした。

ブラームスの遺品の中から友人で極子の音楽教師でもあったボクレットが「六段の調べ」「宮さん宮さん」など5曲を採譜して出版した「日本民謡集」が見つかり、「六段」にはブラームス自身の書き込みもあったことから、ブラームスが本楽曲に大変興味を持ち、最初のモチーフがクラリネット五重奏曲の2楽章に影響を与えたのではないかと音源を使って解説されました。

あの時代に日本女性が鹿鳴館や海外で溌溂と活躍してたことや、ジャポニズムが絵画だけではなく、音楽にも及んでいたとのお話は新鮮でした。

萩谷さんが前日のリハで「六段の調べ」は録音より生演奏の方が良さそうと思いつき、当日は和装で琴を奏でながらのレクチャーになったのは、嬉しいサプライズでした。ブラームスも聴いただろう「宮さん宮さん」については、i-Café Singersが予めリモートで収録したものを、ご披露しました。

今回は40人を超える参加者で賑わいましたが、ZOOMでもかなりのことが出来るとを体験できて、長引くコロナ禍下での活動展開に希望が湧いたのは幸いでした。

萩谷さんが、i-Caféにご出講されたことを自身のブログに下記の通り詳述してくださったので、下の緑色の文字をクリックしてぜひご一覧ください。

米欧亜回覧の会 i-Caféに『ブラームスに箏を聴かせた、岩倉具視の娘戸田極子』の演題でズーム出演させていただきました。 : 萩谷由喜子のブログ (livedoor.blog)

(岩崎洋三記)

i-Cafe:「官主導の国民音楽に先立つ明治期のキリスト教的音楽教育・実践の諸相」

日時:令和2年10月11日(日)13:00~15:00
場所:ZOOMによるオンライン開催第54回i-Cafe開催報告

講師:小檜山ルイ先生(東京女子大学現代文化学部教授、
お茶の水大学ジェンダー研究センター客員教授)
学位:国際基督教大学大学院博士(卒業論文:「米国
婦人宣教師・来日の背景とその影響 : 明治初期にお          ける日米文化交渉の一系譜」)
研究テーマ:女性史、ジェンダー論、比較文化
アメリカ社会史、日米関係史。特にアメリカ女性と
日本及び東アジアとの接点に関心。

著書:
『日本にとってのキリスト教の意義』
日本キリスト教文化協会編共著教文館
2019/09
『アメリカ婦人宣教師 ― 来日の背景とその影響』1992年 –
女性史青山なを賞(1993年)、キリスト教史学会学術奨励    賞
(1994年)他
『アメリカ・ジェンダー史研究入門』編、2010年など

内容:明治初期におけるキリスト教的音楽空間・教育と官製音楽空間・教育歌や飲食を伴うi-Caféは本年2月に第53回を四谷のガイヤールで開催して以降コロナ禍のため中断を余儀なくされていた。10月11日(日)にインターネット形式に変更して再開したところ、地方や海外の会員、関西の大学の先生方も含めて48名と、かってない多数の方々にご参加いただけて、ニューノーマルの希望が拓けたのは嬉しい限りだった。

会は従来同様第一部お話、第二部ミニ・コンサート、第三部交流会の三部形式で進め、第一部には東京女子大学現代教養学部教授小檜山ルイ先生をお招きして「官主導の国民音楽に先立つ明治期のキリスト教的音楽教育・実践の諸相」と題して明治期の西洋音楽導入に米国キリスト教宣教師の果たした役割を中心にお話いただいた。

小檜山先生は、国際基督教大学大学院博士論文「米国婦人宣教師・来日の背景とその影響 : 明治初期における日米文化交渉の一系譜」で、明治期に日本に派遣された宣教師の3分の2が女性だったとして、日本の教育・西洋音楽普及に女性宣教師が果たした役割が大きいことを強調された。また、日本人が讃美歌集を好んで買い求めるなど讃美歌に馴染んだのはキリスト教の持つ神と永遠など、広く長い空間の想像力が魅力だったのだろうとした。

また昨年アメリカ学会の中原伸之賞を受賞した近著『帝国の福音ールーシィ・ピーボディとアメリカの海外伝道』では宣教師を送り出したアメリカの国内事情を検討した由。日本に婦人宣教師を多数派遣することになったのは、音楽のできる婦人宣教師をしたところ、人を集めるのに有効だったからの由で、音楽の力の表れだろう。讃美歌が教育と礼拝の音楽から、ナショナリズムを含む運動の音楽に発展したとするところは傾聴に値する。

なお、小檜山先生は明治期の西洋音楽導入を官製ルートと民間ルートに分け、前者は軍楽と音楽取調掛、後者の主たるものを賛美歌とする。その上で忠君愛国・自然賛美・天皇賛美を歌った小学唱歌集91曲中16曲が讃美歌と同一旋律だったとし、編集者のお雇いメーソンが熱心なクリスチャンだった影響を指摘した。

質疑応答の時間では、2月のi-Caféで「築地居留地と近代音楽-讃美歌との出会い―」をお話いただいた中島耕二さんはじめ多くの参加者から活発な質問・ご意見を頂戴した。

第2部ミニ・コンサートでは、♪明治の讃美歌と唱歌♪と題して、ソプラノ武藤弘子さん、ピアノ植木園子さん、合唱i-Café Singerで、お話に絡めた讃美歌2曲と音楽取調掛で西洋音楽を学んだ納所辨次郎作曲の唱歌「うさぎとかめ」、そしてアンコールに「見上げてごらん夜の星」を披露した。これらは、事前にリモートで収録したものを吉原さんが編集したビデオ上映だったが、臨場感のある見事な出来栄えだった。

小檜山先生にもご参加いただいた第三部交流会もリアルの時同様に盛り上がって、初めてのネット形式i-Caféは盛会裏に終了した。(岩崎洋三記)

 

 

i-Café:『築地居留地と近代音楽―讃美歌との出会い―』 

日時:令和2年2月16日(日)14:00~15:00
場所:サロンガイヤール 四谷

第一部のお話築地居留地研究会の理事で元明治学院大学客員教授の中島耕二氏をお迎えして築地居留地と近代音楽―讃美歌との出会い―』 と題して、日本の近代音楽が同居留地から始まったこととを、具体例を多く交えながら語っていただいた。

1869(明治2)年に開設された築地居留地には、外国商社が横浜に留まったため、主にキリスト教宣教師による教会や青山学院、女子学院、立教学院、明治学院、女子聖学院、雙葉学園等の前身が設立され、讃美歌が響いていた。童謡の♪もしもしかめよ、かめさんよで始まる「うさぎとかめ」や文部省唱歌の「夏は来ぬ」、歌曲の「からたちの花」それに長野県民歌「信濃の国」など良く知られた曲を作った日本の代表的な近代音楽家たちは築地居留地と深い関係を持っており、その原点に讃美歌があったとのお話は説得力があった。
ソプラノお二人とi-Café Singers4人が「にわか聖歌隊」となり、お話のタイミングに合わせて讃美歌や、それを元歌にした唱歌等を逐次演奏した。

第二部 ♪ミニ・コンサートは、ソプラノの森美智子さん、武藤弘子さんをお迎えして、讃美歌から唱歌・日本歌曲へ~と題して、讃美歌や居留地と関係のあった滝廉太郎や山田耕作の歌曲などを、植木園子さんのピアノ、i-Café Singersの合唱を添えて披露した。この中で、2007年に「日本の名歌」にも選ばれた明治17年(1894)の日本唱歌「仰げば尊し」のメロディーが、実は1871年にアメリカで出版されたSong for the Close of School から借りたものだったと2011年に明らかになったのはドラマチックで、Singersは双方の歌を披露した。

第三部 交流会は、築地居留地研究会理事長水野雅生さんに乾杯の音頭をお願いして始まった。キッチンマスター役の沼崎有さんが、講演そしてコンサートと同時進行でオープンキッチンでプロの腕前を振ってくださり、交流会は大変盛り上がった。明治洋食の典型として選んだ「海軍カレー」には、長い行列ができた。(岩崎洋三記)

i-Café:初回地方公演

日時:令和元年11月13日(水)
場所:ゲルト・クナッパー ギャラリー(茨城県久慈郡大子町)

第52回i-Caféは、11月13日(水)茨城県久慈郡大子町のゲルト・クナッパー ギャラリーで開催されました。『i-Caféの絵』を描いてくれた会員のイラストレーターゆうきよしなり氏が同所で個展を開催する機会に、i-Café初の地方公演を実現しようと企画しました。直前に台風19号で町を流れる久慈川が氾濫し、水郡線の鉄橋が二つ落ちるなどの大災害に見舞われ、復興中に火災も発生して、一時は開催が危ぶまれましたが、『こんな時こそ、ゆうきよしなりさんのほっとする絵や、i-Café-musicで町の人たちに元気になってもらいたい』との二代目館長ウテ・クネッパーさんの決断でi-Caféは決行されました。東京から東北新幹線で那須塩原駅まで1時間、そして車でさらに1時間の遠隔地でしたが、泉代表以下12名の会員が駆けつけ、地元参加者共々40人以上の賑やかな会になりました。

①会場は江戸末期の古民家
会場は、1975年に大子に移り住んだドイツ人陶芸家故ゲルト・クネッパーさんが、廃屋になっていた江戸時代末期の長屋門付き藁ぶき屋根古民家修復し、長屋門にギャラリーを設けたもので、i-Caféは広い庭をの奥にある母屋で行われました。陶芸作品に囲まれ、部屋の中央には大きな鉄瓶の架かった囲炉裏がある趣のある会場でした。ウテさんはゲルトさんの長女で、5年前の当会新年会に来てくれたお馴染みでした。

②レクチャーは畠山朔男会員の『岩倉使節団に同行した5人の女子留学生』

プログラムは何時ものように第一部「映像とお話」、第二部「ミニ・コンサート」、第三部「交流会」の三部構成で、第一部では、DVD 『岩倉使節団の米欧回覧』 の第1章 「使節団の出発」を映した後、会員の畠山朔男氏が『岩倉使節団に同行した5人の女子留学生』と題して、津田梅子、大山捨松、永井繁子を中心に、留学生派遣経緯、現地での勉学状況、帰国後の活躍ぶりを、パワーポイントを駆使して丹念に話してくれました。大山捨松が那須塩原駅近辺に住んでいたこともあり、大変興味深く聞いていただけました。

③ミニコンサートは、永井繁子日本初演の『舞踏への勧誘』や『トミー・ポルカ』など

第二部ミニコンサートでは、帰国後音楽取調掛の洋琴教授となり西洋音楽導入に努めた永井繁子が明治22年6月華族会館の「音楽同好会」で日本初演したウェーバー『舞踏への勧誘』と、16歳で通訳見習いとして岩倉使節団に加わり、全米の人気者となり「♪小柄でかわいいトミー、人妻も娘も夢中、日本から来たサムライ・トミー♪」と歌われた立石斧次郎の『トミー・ポルカ』を植木さんがピアノで演じた後、i-Café Singersの畠山、岩崎の二人が、ジョン万次郎が日本に伝えたフォスターの『おおスザンナ』と『ケンタッキーの我が家』を披露しました。

③地元の方々と交流
第三部交流会では、ウテさん手作りのホットワインで体を温め、囲炉裏に手足をかざしながら、地元の方々と話が弾みました。シカゴの村井さんの紹介で水戸から駆けつけて下さった鈴木祐志さんには、前田利嗣の随員として岩倉使節団に加わった関澤明清が日本で初めて鱒の人工孵化を成功させたこと、その試験地が大子に近い那須や水戸だったことを語っていただきました。最後にみんなで『里の秋』を歌って、名残を惜しみました。
(文責:岩崎洋三)

 

i-Café:「イタリア編」

日時:令和元年9月8日(日)14:00~15:00
場所:サロン・ガイヤール

『第33回i-Café-music~イタリア編』は、9月8日(日)四谷 『サロン・ガイヤール』 で開催されました。夜半には台風15号が上陸見込みとの予報もあり開催が危ぶまれましたが、意外にも超満員になり、魅力的なお話とミニコンサートに盛り上がって、天候悪化前にご帰宅いただけたのは幸運でした。

『第一部映像とお話』では、DVD『岩倉使節団の米欧回覧』の第8章「西洋文明の源流イタリア」を見た後、音楽評論家萩谷由喜子さんに『明治の洋楽発展に寄与した女性たち~幸田姉妹、三浦環、大山久子他』をお話いただきました。

女性の視点から描く音楽史に定評がある萩谷さんは、昨年出版した『蝶々夫人と日露戦争~大山久子の知られざる生涯』という本で、日本が舞台となったイタリアの名作オペラ・プッチーニの『蝶々夫人』の誕生を、同年に起きた日露戦争と絡めて描いています。萩谷さんによれば、『蝶々夫人』には「宮さん宮さん」、「お江戸日本橋」、「さくらさくら」等8曲の日本の歌が使われているが、それらは当時の駐伊公使大山綱介の夫人久子がプッチーニに紹介したそうです。それらがどの様にオペラに取り込まれたかを、萩谷さんはピアニストの植木さんに逐一弾いてもらいながら具体的に説明してくれました。第3幕の幕切れに当時の流行歌だった「推量節」のメロデイーが ドラマチックなオーケストラの曲になって奏されることをはじめ、日本の歌がオペラにごく自然に取り込まれていることを教えていただいた。

オペラ誕生と同時期に、イタリアの造船所がアルゼンチンの注文で建造した二隻の軍艦が注文取消しになったとの情報が大山公使にもたらされ、日本が一触即発のロシア戦に備えて購入し、<日進><春日>と命名したこと。購入代金153万ポンドの支払いはロンドンで行われ、これに関わったのが元岩倉使節団員で日英同盟締結に活躍した林董駐英公使だったこと。 日本が日露戦争に勝利したことでプッチーニの日本を見る目が変わり、初演で不評だった『蝶々夫人』から日本を蔑視するような場面を修正し、その結果『蝶々夫人』は世界のオペラハウスで上演される上位5に入るオペラになった等々のお話はとても興味深かく、オペラを見るのが一段と楽しみになりました。

『第二部ミニコンサート』では、メゾソプラノ伊達伸子、ソプラノ酒井えり子、同磯田直子のお三方が、『蝶々夫人』から『ある晴れた日に』や『花の二重唱』、そしてイタリア民謡『チリビリビン』などを熱唱していただき、満席の会場はオペラハウスと化しました。i-Café Singersは戊辰戦争で歌われた日本最初の軍歌『宮さん宮さん』を披露しましたが、この曲はオペラの第二幕で蝶々さんに求婚するヤマドリ公のテーマに使われている由です。因みに、『チリビリビン』は、お三方の師匠で往年の名プリマ大谷洌子さんが1955年のNHK紅白歌合戦で歌った歌だそうです。

『第三部懇親会』にはアメリカの大学院で、日本に派遣された宣教師について博士論文を書いているという若い女性も含めてほとんど全員が残り、『台風どこ吹く風』と盛り上がりましたが、電車の動いている内に帰ろうと5時前に散会しました。
(文責:岩崎洋三)

i-Café:5月度開催報告「岩倉使節団も味わったベルギービールの話」

日時:令和元年5月26日 14:00~17:00
場所:四谷「サロンガイヤール」
第1部:映像とお話

①映像:DVD「岩倉使節団の米欧回覧」第7章小国の知恵から「ベルギー」
②お話:門司健次郎氏(元カナダ大使)

以下の文章は門司氏のFB <https://m.facebook.com/story.php?story_fbid=147662226369866&id=100033782686891>

からの転載です。

26日岩倉使節団の米欧回覧実記を読み解く「米欧亜回覧の会」で、ベルギービールの講演とテイスティングを行いました。岩倉使節団は、18732月に8日間ベルギーを訪問しています。当時のベルギーは独立後40年強の若い国でしたが、欧州でも先進の重工業国であり、使節団は、製鉄所、ガラス工場、ブリキ工場始め多くの工場を視察しました。一行は、その前に訪問した米、英、仏の大国の力に感心しつつも、ベルギー、オランダの両国について、小国にもかかわらず、自主の権利を有し、経済や貿易で力を発揮していることに感心しています。大国と日本との文明度の落差を痛感し、極東の小国日本の姿をヨーロッパの小国と重ね合わせ、そこに模範国としての可能性を見ていたとも解されます。 

 

ビールについては、英国でビール工場を視察し、「欧州でビール醸造が盛んなのは英、独、オーストリア及びベルギーの各国であり、それぞれ努力している。我々が見た工場の広大さを見ても、この産業がいかに盛んかがわかるというものである。」としています。
ベルギーはビールの博物館と言われますが、それは、銘柄の多さではなく、様々な異なるタイプのビールが醸されているという多様性によるものです。私は2回のベルギー勤務で25カ所の醸造所を訪ね、420種類のビールを味わい、ベルギービールの虜になりました。

   

ベルギーという国とベルギービールの魅力についての講演の後、プロのソプラノ歌手によるミニコンサートを挟み、試飲に入ります。ベルギービールの多様性を伝えるべく7種類のビールを用意しました。タイプとしては、白ビール(フーガルテン)、ランビック(ボーン・クリーク:桜桃ビール)、ベルギー・エール(デ・コニンク)、地域特別ビール(ラ・シュッフ)、強い黄金エール(デュベル)、トラピスト(シメイ・ブルー)、ランビック(ボーン・グーズ)です。

 

スレーワーゲン在日ベルギー大使のご厚意で、2種類のランビックを協賛いただき、自然発酵ビールという最もベルギーらしいビールも味わうことが出来ました。全て上面発酵のエールタイプであり、ピルスナータイプとの大きな違いはその香りと複雑な味にあります。ギンギンに冷やすことはせず、それぞれに適温があり(今回は、68℃812℃1216℃3つ)温度調整に苦労しました。ベルギービールの美味しさと幅の広さがよく分かったと参加者の皆さんには大変好評でした。 

 

ベルギービールの文献、ポスター、専用グラス、Tシャツ、ラベルのコレクション、飲んだ記録等も持ち込みました。ネクタイは、ラ・シュッフの小人柄とホップ柄。まだ日本でベルギービールがよく知られていなかった90年代前半にその普及に力を入れましたが、その頃の雑誌(東京人)の記事(文章は藤田千恵子さん)もお見せしました。

    

   

ベルギービールの後は、持ち込んだ日本酒の一升瓶を味わってもらいました。好みの純米酒を考えていましたが、季節外れの真夏日に、「紀土 純米吟醸 夏の疾風」を買ってしまいました。福島県喜多方市小原酒造のもろみにモーツァルトを聴かせて醸した蔵粋シリーズ2本の持ち込みもあり、日本酒の宣伝も出来ました。
以上

第2部:ミニコンサート ~5月は歌が溢れ~
♪ モーツァルト 『5月の歌』
♪ ブラームス  『5月の歌』
♪ フォーレ 『5月の歌』
♪ シューマン
  『美しき5月に』
♪ 『Ein Prosit 』 など乾杯の歌

ソプラノ:
森美智子
(東京藝術大学卒業・同大学院修了、共立女子高校講師、二期会会員)
武藤弘子(武蔵野音楽大学卒業、ワシントン大学院修了、鎌倉女子大学講師、二期会会員)
ピアノ:
植木園子
東京藝術大学別科修了、武蔵野音楽大学卒業、同大学院修了)
  唱:  i-Café Singers会員/畠山朔男Tr.岩崎洋三Tr.吉原重和Br.西川武彦Bs.相楽敏夫Bs.

第3部:交流会

i-Café:『平成政権史―そして安倍政権の今』

日時:2019.4.2 13:30~16:30
場所:日比谷図書文化館4階スタジオプラス
講師:芹川洋一氏 日本経済新聞論説フェロー

芹川氏は1979年から2005年まで日経新聞の政治部に所属、その後も政治部長、論説委員長などを歴任し、一貫して踏み込んだ政治報道を貫いて来られた。昨年10月からはBSテレ東の『NIKKEI経済サロン』のキャスターとしてもご活躍中だ。テーマに沿ったご著書も、『平成の政治』、『平成政権史』、『政治が危ない』等少なくない。平成の終わりで、新元号制定や統一地方選挙関連のお仕事でご多忙の中、当会に時間を割いていただけたのは、大変幸運だった。

芹川氏は、折角政権交代を実現した民主党が政権運営に失敗して政権の座から滑り降りた後、野党が民主勢力の結集叶わず弱体化し、自民党長期政権を許容したという。現在の5政党の体制は、昭和の自民、社会、公明、民社、共産とほとんど一緒とし、自民党長期政権化の55年体制に戻ったともいう。そして、野党が旧体制を打破できるか否かは、今夏の参院選で野党が結集して一人区を制することが出来るか否かにかかっていると。

平成の政治に大きなインパクトを与えたものとして、芹川氏は小選挙区制の導入、上級官僚任免権を含む強すぎる官邸、政治資金規正法に伴う派閥の勢力後退で、養成機能が衰え国会議員の専門性が低下、地方議員が相対的に優位に立つ局面のが目立つようになったと。もし、野党が今後もバラバラのままだったら、待っているのは辞世の句のみと厳しくむすんだ。

講演後の質疑応答に丹念にお答えいただき、セッションが40分も続いたのは近来稀だった。それほど、お話が具体性を帯びて分かり易く、真剣な議論を呼び起こしたということだろう。芹川氏がお帰りになった後も、打ち上げでホットな論議が続いた。(文責岩崎洋三)

i-Café:3月開催報告(第32回)

3月10日(日)14時~15時
場所:西荻窪 スタジオ&ギャラリー『響』

第一部 映像とお話では、DVD『岩倉使節団の米欧回覧』の
第7章「小国の智恵」を見た後、毎日新聞編集委員森忠彦氏に
『EUに学ぶ外国人労働者の問題点』
と題して、その背景や歴史、問題点などをお話しいただきました。

シリア等から大規模難民が押し寄せる欧州各国は、雇用・宗教問題が深刻化し難民受け入れに消極姿勢に転じている。一方、生産年齢人口の減少から労働力不足に見舞われている日本は、昨年末改正入管法を成立させて、2017年段階で128万人いた外国人労働者を増やす姿勢を明確にした。近隣住民との摩擦や、社会福祉問題・移民問題も含めて、問題深刻化を回避するには、相互理解・共存が不可欠と結んだ。

第2部 ミニコンサートでは、「あの山を越えて」のテーマでゲーテの教養小説「ヴィルヘルムマイスターの修行時代」の中のミニヨンの歌「ただ憧れを知る者だけが」を歌詞にした異なる作曲家による歌曲を、森美智子さん武藤弘子さんのソプラノで聴き比べた他、「サウンドオブミュージック」 から 「エーデルワイス」「クライム エブリ マウンテン」を i cafe singersも加わって歌い、 ヨーロッパの人達の、山を越えた所にある遠い異国への憧れの気持ちに思いを馳せた。

第三部懇親会では、講師の森さん、今回もご参加下さったコルカット先生などに活発な質問が飛び、それに丁寧にお答えいただき、今回も賑やかで和やかな、そして贅沢な時間になりました。(岩崎洋三記)

 

i-Café:≪大仏次郎『天皇の世紀』を見る会≫

『天皇の世紀』は朝日新聞が明治100年に因んで昭和42年に連載をスタートさせた大仏次郎の「史実と信ぜられるものに従い、克明すぎると自分でも見るくらいに、事実のブロックを積み重ねて行って、それがどんな意味を物語っているかを書き綴った」長編で、後に朝日放送で13話の連続1時間物テレビ映画として放送されました。

『見る会』は、明治150年の年に、この『天皇の世紀』13話を7回連続で見ながら、明治維新や岩倉使節団の意義を改めて考えようと昨年7月シェア奥沢でスタートしました。
2回目以降は会場を日比谷図書文化館4階のセミナールームに移し、本年2月の7回目をもって無事終了しました。

1時間物のテレビ映画と言う限界は当然あるものの、映像の迫力は絶大で、文字通り生きた歴史を学べました。毎回丹念な説明で理解を促進してくださったナヴィゲーターのみなさんに心から感謝申し上げます。

それにしても、大佛次郎が筆半ばで倒れ『天皇の世紀』を完結できなかったことが心残りです。(岩崎記)

     
開催日・場所 タイトル(各巻48分) ナヴィゲーター
1 7月22日(日)       @シェア奥沢 第一話 『黒船渡来』~太平の眠りを覚ます4隻の黒船    

第二話 『野火』  ~変革の種を蒔いた吉田松陰

半澤健市氏
2 8月21日(火)       @日比谷 第三話 『先覚』~砲術開祖・高島秋帆の執念       

第四話 『地熱』~日米修好通商条約締結の波紋

岩崎洋三氏
3 10月5日(金)       @日比谷 第五話 『大獄』~安政の大弾圧と桜田門外の変        第六話 『異国』~咸臨丸による太平洋横断の船旅 小野博正氏
4 11月13日(火)      @日比谷 第七話 『黒い風』~相次いで起こるテロリズムの嵐        第八話 『降嫁』~公武合体に暗躍する人々 芳野健二氏
5 12月11日(火)      @日比谷 第九話 『急流』~寺田屋事件の裏で起きた悲劇        第十話 『攘夷』~生麦村で白昼起きた異人斬り 芳野健二氏
6 1月17日(木)      @日比谷 第十一話 『決起』~奇才・高杉晋作の短すぎた生涯        第十二話 『義兵』~土佐勤皇党の斃れた志士たち 小野博正氏
7 2月21日(木)

@日比谷(最終)

第十三話 『壊滅』~時流に乗り遅れた天狗党の悲劇 塚本弘氏