グローバルジャパン研究会開催報告「イスラエル・パレスチナ問題」

日時 2023年11月18日(土)14時10分から17時
場所 渋谷貸会議室
参加 7名
テーマ イスラエル、パレスチナ問題

議事要旨
3人から発表の後、議論を行なった。

(塚本) 先日、駐日イスラエル大使との夕食会で、イスラエルとサウジアラビアの国交樹立が間近との話を聞いたが、その2日後の10月7日、ハマスからの大規模な攻撃。吉川元国連大使から、パレスチナ問題について、歴史的背景を聞いた。この問題は、英国の「3枚舌外交」によって始まった。アラブに対しては、フセインマクマフォン協定により、オスマン帝国崩壊後のアラブの独立とアラブ人のパレスチナへの居住を認めた。ユダヤ人には、バルフォア宣言により、パレスチナでのユダヤ人の建国を支持。サイクス・ピコ協定により、オスマン帝国後には、同地域を英、仏、露で国際分割し、パレスチナを国際管理とするとした。第2次世界大戦でナチスによるホロコースト、戦後のユダヤ人難民のパレスチナへの大量移住があった。1947年国連はパレスチナ分割決議案(パレスチナは、ユダヤ人の国とアラブ(西岸とガザ)に分割。エルサレムは国際管理。)を採択。この決議案は、米ソが賛成(英国は棄権)したものだ。ただし、アラブ諸国は拒否。1948年イスラエル建国。同年第1次中東戦争。エジプト、ヨルダンが侵攻したが、イスラエルが勝利。1967年第3次中東戦争でイスラエルがエジプト、シリアを奇襲攻撃し、ゴラン高原、西岸、ガザ、シナイ半島を占領。同年安保理決議242採択。中東紛争の全ての当事者が合意した唯一の安保理決議。「領土と平和の交換」原則を定めた。中東和平への道のりは遠い。1978年キャンプデービット合意と1979年イスラエルエジプト平和条約。その後、1993年オスロ合意。ただ、和平を進めた指導者は、暗殺される。エジプトのサダト、イスラエルのラビン。

イスラエルはハマスを殲滅するまで、作戦を続けると言っており、地下トンネルは、80mにも及ぶものがあり、相当困難な作戦。アメリカしかイスラエルを止められる国はない。イスラエルの攻撃で、パレスチナの被害者が増えると、反イスラエルの声が強まるおそれがある。10月11日、サウジアラビアで開催されたイスラム国会議には、イランも参加。基本的にアラブ諸国とイランは対立関係にあるが、イスラエルの攻撃の度が過ぎると、反イスラエルでこれらの国がまとまる懸念もある。

(鎌田)  2014年、ネタニヤフ首相が訪日した際、私はイスラエル大使館の誘いで昼食会に参加し、ネタニヤフ首相と握手したことを昨日のように覚えている。それより2年前のことだが、バラク国防大臣が防衛省を訪問し、当時の田中防衛大臣と会談し、私もその会談に参加した。ちょうど、シリアの内戦が始まった頃で、アサド大統領が化学兵器を使用したことが大きなニュースになっていた。これについて、バラク国防大臣は、このような政権は12月までに潰れると言っていたが、今に至るまで潰れていない。この話を私の知り合いのイスラエル政府の高官に伝えたところ、嫌な顔をしながら、今、イスラエル国防軍では、10年先の見通しは立てないとしていると述べていた。不確定要素が多すぎて、意味がないからだ。オスロ合意をバラク首相は進めようとしたが、アラファトが最終的に明確な意思表示をしなかったため、シャロンに選挙で大敗。シャロン首相は強硬策(パレスチナ自治区への侵攻、分離壁の建設、など)を実施し、テロ攻撃を抑えた結果、テロ攻撃がないなら、パレスチナと話し合う必要もないとの機運が拡がり、「二国家制度」により、恒久的な平和を構築する機運は急速に失われた。

中東をめぐる地政学上の変化として、これまでは、パレスチナ問題を巡るイスラエルとアラブ諸国の対立が主軸となっていたが、近年は、シーア派イランの台頭を受けて、イラン及びそれを支援するグループとイランを脅威と感じる国家の地政学的対立が主軸となって来ている。友人のイスラエル人からの情報だが、今回の攻撃は、ホロコースト以来の危機と認識。1000人以上の一般人が虐殺され、その8割が拷問された。残虐な写真もある。

(小倉)
カイロ支局長のとき、ガザにも行った。その後、暗殺されたが、ハマスのヤシン師にもインタビューした。ボディガードが周りを固めていた。ニューヨーク支局長の際、国連でのトップイシューは、パレスチナ問題だった。ハマスは、エジプトから始まったムスリム同胞団のパレスチナ支部で人々の生活を支援する組織だ。エジプトでは、弁護士や医者の3~4割がムスリム同胞団といわれている。パレスチナ自治政府に比べ、ハマスの方が汚職が少ない。

1948年にイランとトルコはイスラエルを承認している。イランには、ハマスへのシンパシーはない。湾岸諸国が一番恐れているのは、革命が起こること。指導者も若返っており、中東戦争を経験したことのない世代がリーダーになっていることもあり、パレスチナ問題にそれほど関心がない。サウジアラビアとイスラエルの国交もいずれは樹立するのではないか。中東のどの国も国内問題を抱えており、イランも国内で不満が高まっている。

その後、以下のような議論を行なった。
-アメリカが中東から手を引き始めている。UAEでは、原子力に力を入れている。
-宗教には、絶対的な善と悪を求める怖さがある。利益追求の世界では、相対主義なので、妥協が成り立ち得る。
-キッシンジャーは、国際政治を安定するには、すべての国に多少の不満があることがよいと言っている。
-パレスチナ問題、狭い土地では発展が難しい。経済的基盤をしっかりして、水のリサイクル、農業などを考えることが必要。
-イスラエルの強みは、国民がすべて軍の経験をしていること。
-今回の攻撃で、ハマスだけではなく、一般パレスチナ人の被害が拡大すると、世界的に反イスラエルの機運が高まるおそれがある。
-教育の問題も重要。モスクでは、敵を殺せと教えているところもある。
-日本も何かしなければいけないが、なかなか容易ではない。

(文責 塚本 弘)

 

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