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実記輪読会:36巻「シェフィールド市」ノ記

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日時:令和3年1月13日 13:00~15:00
場所:ZOOMに依るインターネット開催
内容:明治5年9月26日(1872月10月28日)から29日(同10月31日)までシェフィールド市を訪問した。

シェフィールド市概括
26日、ブラッドフォードを汽車で発ち70km南方のシェフィールドに着く。ウィルソン氏の出迎えを受ける。当市滞在中はウィルソン兄弟の私邸に分泊することにする。シェフィールドは当時第8位(現在は第5位)の人口を有する工業都市で産業革命当時から鉄鋼業が盛んであった。現在は英国有数の学術都市、科学技術集積地であり、シェフィールド大学は5人のノーブル賞受賞者を輩出する名門大学である。1856年、鉄鋼のベッセマー転炉がこの地で発明された。ゾーリンゲン・関市と併せ「刃物の3S」と呼ばれている。

鉄の製造とベッセマー法
27日、キャメル社製鉄工場を見学。鉄鉱石(酸化鉄)を還元して銑鉄【実記では生鉄ナマガネと記す】を作る高炉【猛風罏】、その後工程で酸素を吹き込んで中に含まれる炭素を除去し鋼【熟鉄】を作るためのベッセマー転炉【鼓風罏】や、線材・圧延・試験場・鑢ヤスリ・車輪・スプリング等種々の工程を見学する。創業20年で広大な工場(伍するは独クルップ社のみ)に成ったことに驚嘆する。

チャッツワースハウス
28日、馬車で西方10kmにあるデボンシャー家のキャベンディッシュ公爵が所有するチャッツワースハウスを訪問。白亜3階建ての石造建物はさながら美術館の様である。公爵は誠実【真率】な人柄、昼食には母堂・夫人も入り歓待を受ける。昼食後は庭に出て(広大な敷地は42haに及ぶ)花園・厩・庭園・温室を見学する。帰途、キャメル氏宅に立ち寄る。ウィルソン氏宅で夕食の後24hから舞踏会に行く、とある(遅すぎる?)。

刃物製造工場・製鉄工場・カトラリー協会
29日、ロジャース社刃物製造工場、ビッカース社製鉄工場を見学。カトラリー協会主催の夕食に招かれる。カトラリー協会は刃物職人(Cutler)のギルド(同業者組合)でありその建物は1832年に建てられたものである(使節団訪問の建物が現存!)。ビッカース社は戦艦三笠や戦艦金剛も製造した造船・兵器・製鉄のコングロマリットであったが、2004年ゼネラルダイナミックス社に買収され、その名は消滅した。

(冨田兼任記)

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