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・・・米欧亜回覧 第6号(1997年1月25日)より

 

〔号外〕

 


 

特集 
『堂々たる日本人〜知られざる岩倉使節団〜』
出版記念パーティ

 

 泉三郎著「堂々たる日本人」の出版記念パーティが、1月7日午後6時半より日本プレスセンター10階のホールで行なわれた。新年早々にもかかわらず各界から230名近くの人が参集し大変な盛会となった。


 パーティは新年にふさわしく笹川典生クインテットの演奏に乗って華やかな雰囲気の中で始まり、諸先生方からの個性あふれるスピーチをはじめ、映像「堂々たる日本人〜岩倉使節の群像」の上映、岩倉使節団のご子孫のご紹介、音楽と映像による「世界一周」の趣向など盛りだくさんの趣向で午後9時まで賑わった。


 以下、当日のスピーチを要約してご紹介したい。

 


 

斉藤茂太先生(日本旅行作家協会会長、斉藤病院名誉院長)

 

 昨年日本郵船の「飛鳥」が初の世界一周クルーズを行ないましたが、私も船上講師としてそれに乗船しました。


 泉さんも講師の一人としてリスボンからニューヨークまで乗船して5回にわたって「岩倉使節」の講演をなさいました。それが大変な人気で一番大きなグランドホールが超満員という盛況だったのです。まあこの船にはいろんな講師が乗って各地で講演をしたんですが、泉さんのが一番評判がよかった…私も実はその講座で大変勉強させてもらったわけなんです。


 さて今日はそのエッセンスをまとめた「堂々たるご本」ができまして、本当におめでとうございます。このごろの日本はやけに自己卑下が多いんですが、明治の初年にこういう「堂々たる日本人」が出たということを知るだけでも大いに勇気付けられます。

 


 

芳賀 徹先生(国際日本文化センター教授、東京大学名誉教授)

 

 私はフランス留学から帰って来たとき、本郷の古本屋で「米欧回覧実記」の5冊揃ったのをみつけました。読みだしたら実に面白くてわくわくしてくる。アメリカ、イギリス、フランス、ドイツと12カ国を旅してかえってくる、1年10ヶ月の旅行が隅から隅までこれ以上ないような言葉で、鮮明に、鋭く、重厚に、深く、広く、遠く、観察して書かれている、本当に驚嘆しました。


 泉さんはその旅を実際に追跡され、「明治四年のアンバッサドル」以来、次々と本をだされまして、今回の本でそれがいよいよ集大成されました。


 岩倉使節団の旅行のさまについてはもちろんですが、この本の真ん中から後半にかけては岩倉使節が1年9ヶ月欧米を廻っている間に留守政府が何をしていたのか、帰国後どうなったのかそのきわどいところが実に要領よく書かれていまして、まさに堂々たる日本人の気迫がこの本に乗り移って表現されているように思いました。


 これからの日本がどうなっていくのか誰にもわかりませんが、もう一回「米欧回覧実記」を読み、岩倉使節団の歴史を学び、われわれのものにすることによって、日本も生きながらえることができるのではないかという感じがいたします。世紀末の日本にあたってまことに重要な一書が出まして、今日こうして多くの方々が集まって出版を祝うことはこれからの日本を考える上に大変重要なことであると思います。

 


 

藤岡信勝先生(東京大学教授、自由主義史観研究会代表)

 

 私は昨年の春「諸君」という雑誌に「廃藩置県」のことを書いたことがあります。そこで岩倉使節団のサンフランシスコでの伊藤博文の日の丸演説を引用したのですが、泉さんから早速お手紙をいただきまして、「こんな映像の会があるのだけれど参加してみないか」というお誘いがありました。私は以前から泉さんの本は読んでいましたが、そういう映像の会があるとは知らなかったし、映像で旅が追体験できるなら是非参加してみたいと申し込んだのです。そして「米欧回覧の会」という集いがあっていろいろの方がいろいろの角度から歴史を研究されていることを大変心強く思ったのです。


 私は誇りのもてる日本歴史を書かなくては21世紀の日本はないという危惧をいだいておりますが、「堂々たる日本人」はまさにその意味でも「うれしい、元気の出る、ぴったりの書」だと思います。

 


 

伊藤善市先生(帝京大学教授、東京女子大学名誉教授)

 

 「書名」…これがまことに絶妙ですね。今、日本にもっとも欠けているのは「堂々としてない」ということです。なんでも謝って…やすっぽく、謝ればいいだろうといったところがある。卑屈というのは傲慢にマイナスの符号をつけたものだと思いますが、卑屈か傲慢かになってしまう。「堂々」というのは、お金があるからとかないからとか、身長が高いからとか低いからとか、そんなことではない。いつでも平常心を失わないこと、それがいま最も望まれている時です。そういうときにこういう本が出たということは、本当に共鳴と共感を感じました。


 それに泉さんは岩倉使節の旅をほとんど追体験している、スゴイことですね。これは暇がなければできませんし、お金がなければできません。しかし、暇とお金があっても能力がなければできません。しかもあのような形でこれを表現するということは能力だけでもできない、ファイティングスピリットと愛国心がなければできない、と私は思いました。

 


 

坂垣與一先生(一橋大学名誉教授、元八千代国際大学学長)

 

 第一にこの本の素晴らしいところは「読ませる」ということだと思います。なによりも泉さんの冴えた筆の力が溢れている。文体が独特であり、著者みずからが読者に問いを掛ける、そしてそれに応える問答形式が実にリズミカルに出来ておりまして、必要によっては久米邦武の原文を引用しそれに親切な解説を加えるという、その文体が魅力的であり読者を飽きさせないゆえんであろうと思います。


 第二は泉さんは坂本二郎氏のお弟子さんですからその影響があると感じています。坂本氏は経済政策論をやっていましたが、シュンペーターの文明論的著作である「資本主義、社会主義、民主主義」の翻訳もやったりして、後には未来学会をつくりました。ですから泉さんは新しい文明論的な視線をそのころから勉強していたのではないかとみているのです。


 第三に、この本が今、世界も日本も大変化するこの激動期の中で、とくにわが国の場合、政・官・財・民を問わずモラールというものが退廃している時期、そういう世紀末の症候群があらわれている時期にあたり、泉さんは、この書物を通じて「堂々たる」威厳とか品格、そして思いやりのある心の大切さを説いておられる。世界にはさまざまな民族がありさまざまな価値観がありまさに多元的であります。それが平和的に共存し、共生できるようにならなくてはいけない、そういう日本人よ出よという、憂国の気持ちをこめてわれわれにアピールしている、そこに感銘を受けたのであります。

 


 

川喜田二郎先生(川喜田研究所理事長、東京工業大学名誉教授)

 

 今日の会は私も岩倉使節団の幹部の一員だという気持ちでやってきました。そうしたら全くその通りでした。ここに出席しているみなさんは私だけでなく全部が岩倉使節の一員なんです、いまこの席はロンドンかどこか知りませんがそのレセプションに出席しているところで、そしてビスマルクとかいろいろの人と会談している…そういう会なんです、そう思おうじゃないですか。


 当時の状況に移りますと、いやしくも日本は異質な文明とおつきあいしようという、どうなるかまったく想像もつかない冒険だったと思います。ハードウェアとしての黒船、そしてその背後にあるソフトウェア、それを探りに行くために、よくもこのように馬鹿げた一大視察研修団を編成して、1年9ヶ月ものうのうと欧米をほっつき歩いたもんだ、これは勇断ですよ。私は粛然としてこれを受け入れます。素晴らしいじゃないか、岩倉使節団、万歳だ。


 そこで使節団は何をしたかというと、とにかくこの目で現場を見ようとした、この魂が大事だ、しかも見るだけでなくホテルに帰ってカンカンガクガク大議論した。それが大研修合宿旅行のゆえんなんです。それは先生に見習うというような卑しいもんとは違うんだ、あくまでも自らの力でわたりあうんだという気概である。


 そこでその根本は、国を救うという意識だった。生まれたての日本国を植民地にしてはいけないという愛国心だった。だから我を忘れてがんばった。彼等には我なんて下らんものは意識にないんです。デカルトがなにをいうか知りませんが、それならデカルトの横面をひっぱたけと言いたい。それが我を忘れるということなんだ。それを率直にいわれたのが泉さんだと思う。


 さて、それを今後に移すとどうなるか。明治の先輩たちが出会ったのは、物質とエネルギーの大革命だった。今は違う。泉さんはそれをコンピューター革命だといっている。が、言い替えれば情報革命のことである。その怪物にどう対処するか、われわれも岩倉使節団の一員になったつもりで、明治の先輩たちに恥じないように、我を忘れて新しいグローバルな世界をつくろうじゃないですか。

 


 

井尻千男氏(日本経済新聞編集委員、評論家)

 

 岩倉使節は、やるべきことがいくらでも芋づる式にでてくるような素材です。先程からのスライドをみても使節団のその後を書くだけでも大河小説になると思います。そういう意味で泉さんの岩倉使節団に出会った幸福をずっと思っておりました。


 さて、私も「堂々たる日本人」を読んで小さなコラムを書きましたが、その最後の〆の言葉は「明治の遺産をすっかり食い潰した現代」ということでした。そのすっかり自信を失っている日本人へ、あの素晴らしいネーミングで本を出された。このセンスを大変私は嬉しく思いました。


 それから岩倉使節を繰り返し追体験している泉さんは、その素材を自家薬籠中のものにして語り口がまた堂にいっている…その見事さがひときわ印象に残りました。


 もう一つ泉さんに期待を寄せていることを申し上げたい。それは一方で学究的な大きなテーマに取り組みながら、同時に生活の中で、茶の湯の数奇者でもある。八王子の泉さんのところの茶室でお茶をいただいたことがありますが、泉さんはこういうところでも日本の歴史を確認しながら、同時に最も新しいこれからの日本を考えておられる。そういう伝統を大事にしながら、かつ進取の気象の激しい二面というものが一つの人格として円環を結んでいる、それがまた素晴らしいと思います。

 


 

鈴木幸夫先生(麗澤大学教授、元東京テレビ解説委員長)

 

 現在、一般に「閉塞感、閉塞感」といわれていますが、それは自分がつくりだしているもので、誰かが圧力をかけているものでもなんでもありません。これは自分の心の切り替え方次第でどうにでもなる問題です。今一番悪いのは国民だと思うんです、それからマスコミでもある。もっと前向きに考えるべき時だと思います。


 かつて明治の終わりから昭和にかけて、いろいろの選択肢があったんですね。あの時に、自由主義への道、英米への協調もあった、ところが国権、軍国主義、ファシズムに走ってしまい、日本は方向を間違えた。今、われわれはここでしっかり選択肢を間違えないようにしなくてはいけない。


 戦後のことを考えますと、経済安定本部というのがあって、私なんかも若い記者として詰めておりましたが、あの頃はろくなもの喰わないで明け方になるまで議論をかわしていた。それが結局高度経済成長を支えたと思うんです。それに比べれば、今は右肩上がりでなくなっただけで、やろうと思えばいくらでもやれる段階にいる。だからわれわれは、さきほど川喜田先生がいわれたように、岩倉使節の一員になったつもりで、みんなで大いに議論をし、新しい日本をつくっていく気概をもとうじゃありませんか。

 


 

・・・米欧亜回覧 第6号(1997年1月25日)より

号外 『堂々たる日本人〜知られざる岩倉使節団〜』出版記念パーティ おわり

 

 

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