77号 東京のど真ん中に「米軍専用施設」?!

最近、知人から薦められて、矢部宏治氏の著書「日本はなぜ、『基地』と『原発』を止められないのか」を読んだ。これは我々の拠点とする国際文化会館の直ぐ近くに「治外法権」の空間が厳然と存在していることを教えてくれた。

それは、米軍専用のヘリポートであり軍専用のホテルである。ヘリポートは国立新美術館の隣りにあり、ホテルは天現寺の近くにある。米軍の基地といえば沖縄を連想するが、首都圏だけでも横田、厚木、横須賀基地などがあって、その極めつきが前記の施設ということになる。米国の軍人や関係者は、横田まで飛来して、そこからヘリコプターで六本木に舞い降り、車でニュー山王ホテルに入ることができる。その間に関所はない、フリーパスだ。そしてそのホテルでは、日本の外務、防衛をはじめ関係省庁の高官らと在日米軍のトップから構成される「日米合同委員会」が毎月のように行われているのだ。

私はその二つの地点を歩いてみた。一見して唖然とした。そしてかねて承知していた、広大な敷地をもつ米国大使館の官舎群に足を伸ばした。そこには進駐軍時代を彷彿とさせるバラックハウス的建物群があるのだ。私は粛然として言葉もなくその界隈を歩いた。

すると赤坂氷川神社の前に出た。あの勝海舟の旧宅があったところだ。そして史跡を示す銘板を見ながら、勝と龍馬のことを想起していた。幕末、結ばされた「不平等条約」が幕末維新の志士たちにとってどれだけ屈辱だったか。「治外法権」ほど我慢のならないことはなく、これがバネとなり「真の独立」を目指して、動乱を生き抜き維新を成し遂げ、乾坤一擲の「岩倉使節団」を派遣したのではなかったのか。

ああ、それなのに、それなのに・・・。

われら戦後の民は、70年を経ても「治外法権」を許してのうのうとしている。その謎、悔恨に満ちた複雑なからくりを、平易に明快に解いてくれるのが、矢部氏のこの「志高き渾身の書」なのである。是非一読を薦めたい。

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