国家の政策には短期と中長期のものがある。当面は現実に重点を置くとしても、中長期のものには基本的な理念というものがあり、そこには理想があってしかるべきだ。
安倍政権の施策はデフレ低迷経済に対する「富国策」と隣国「中韓の脅威」に対する「強兵策」と解釈できる。いわば「富国強兵」策である。その先にあるヴィジョンは7年後のオリンピックくらいしか見えない。それは3週間足らず東京中心で行われる若者のスポーツの祭典であり、実態はそれを旗印にした大建設工事の経済効果が狙いとさえみえる。そこには理念らしきものもみえず中長期の目標もなく夢のあるヴィジョンも描かれていない。
今、日本国にとっての「大事」とは何か。それは20年、30年後を見据えて「日本を、世界をどのような姿にしていきたいか」という大ヴィジョンを描くことではないのか。
日本は、四季にめぐまれた青山緑水の列島である。そして中国2500年の文明と西洋250年の近代文明を共に摂取してわがものとしてきた、世界でも稀な東西融合文明の国である。そしてこの160年間、いくたの試行錯誤と成功・失敗の末に、平和で繁栄した国を創り上げてきた。確かに、この20年ばかりは迷走したが、その実績と知恵の蓄積は大きく、いったんそのことに気づき、その気概をもてば21世紀の新しい国社会のモデルを提示しうる位置にあると思う。
私は日本人は今こそ大志を抱き大きな夢を持つべきだと思う。それは英米文明の後追いではなく、それを超える新しい文明の創造でなくてはならない。たとえば、2050年を目標にして「美味し国、福寿の列島を創る」という夢を抱いてはどうか。それには思想の基軸をGNP偏重から、幸福度の重視へと大転換をすることが前提になる。その視点に立てば、「富国強兵」策はまさに時代錯誤であり、「美国福民」策こそが新時代の目標としてふさわしい、そして、グローバルな視点では宇宙船地球号が「争いや格差の舞台」ではなく、「平和と幸福の世界」であることを一途に目指すべきだと思うのだが、如何なものであろうか。