現在の日本の政治状況は深い霧の海を漂っているような感じである。この迷妄を打ち破って明るい未来を切り開くにはどうしたらいいのか。つまるところ「歴史に学ぶ」しかないのではないか。そこで思い起こされるのが「明治維新」であり、「平成維新」が
叫ばれ「大阪維新」が話題になることになる。
ならば、その明治維新とは何か、その具体的な実像をあらためて問い直す必要がある。そこでの最大事はまさに「廃藩置県」であり、知るべきはその具体策を実行した「留守政府」の実像であろう。それは「岩倉使節団」と表裏一体をなす動きであり、その実態をしっかり把握しなければならない。
その留守政府の諸施策に焦点をあてた好著がある、慶応大学の笠原秀彦教授による「明治留守政府」である。本書によってそれまで個々に研究されていたものが全体像として明らかにされた。それによると、身分制廃止、学制改革、徴兵令、地租改正など大改革が相継ぐ中、緊急かつ最大の問題はやはり財政問題だったという。ガンは歳出の四割を占めていた武士階級の秩禄(サラリー)であり、200万士族に転職と退職を強要しなければならない事態だった。そのためには巨額な退職金を準備せねばならず外債を募るしかなかった。そこで急遽、大蔵省から吉田清成が米英に派遣されるのであり、吉田はワシントンやロンドンに滞在中だった岩倉使節団の面々と接触して対応策を練ることになる。
時代の大転換期には、それに対応できる大変革が必要であり、それには大いなる犠牲や覚悟が伴う。激しい反対がおき摩擦が起きる。が、それを突き抜けていかなければ改革はできない。どこまで身を切り、犠牲を払えるか、その覚悟が問われるのだ。いま、「平成維新」を敢行するとすれば、国・地方をとわず議員も公務員もまず身銭を切る覚悟が必要である。そして一般市民も種々の既得権益を削り増税に堪えなければならない。ギリシャもスペインも対岸の火事ではない、我々はそのことを銘記しなければならないと思う。