今年は、岩倉使節団の大旅行から丁度140年目に当たる。サンフランシスコに着いたのが1872年の1月15日、雪のワシントンに着いたのが2月29日、夏のロンドンに着いたのが8月17日、クリスマス間近のパリに着いたのが12月16日ということになる。この1年、アメリカに200日余、英国に120日余、そしてフランスには1873年にかけて60日余も滞在する。まあ、今日では想像も出来ない、内閣の中枢メンバーを擁した大使節団でありながら、のんびりとした大名旅行であった。
本会では、先に歴史部会主催で「岩倉使節団は明治国家に何をもたらしたのか」をテーマに使節の主要人物と留守政府の要人を俎上にのせ会員有志によるパネルデスカッションを行ったが、この四月には「実記を読む会」主催で、同じく会員有志によって「米欧回覧実記」を裏からも斜めからも読もうという刺激的な会が開かれることになった。
幕末維新の大変革を、久米は「世界気運ノ変」に拠ると書いたが、その大変化は蒸気機関や電信に象徴される技術の大革新と産業革命に拠るものであった。平成の日本も、まさにグローバリゼイションの大津波の中にあり、それは画期的な技術革新、コンピューターやⅠTによる情報革命の出現によるものといっていい。
岩倉使節団のメンバーや随行した留学生たちは、その大変化に如何に対応したか、その使命感に溢れた事績、真摯な見聞の成果が、いま、われわれに勇気を与え、多くの示唆を与えてくれることは明らかである。岩倉使節団の旅は欧州各国を回覧し、マルセーユから横浜までの船旅もあって、1873年9月まで続く。したがって我々の140年目の反芻の旅も来年の9月までは続くことになる。当会としては、これを機に、より多くの人々、多くの国民に、この旅のことを知ってもらい、その意義を再認識してもらうことが責務だと思う。会員はむろん関係各位のご協力を切にお願いしたい。