今回の大震災を見て、私は直ぐ2001年の「9・11」を連想した。それが未曾有の大事件であり、世界中に同時に電波でその様子が報じられたからである。あの黒い怒濤のような巨大な津波は、ツインタワーからモクモクとあがる黒煙を思わせたし、海にさらわれる人々はタワーから飛び降りる人々と二重写しになった。その上、このたびは原発事故が重なった。爆発した建屋の無惨な映像は、チェルノブイリを連想させた。近代科学技術の最先端が、もろくも崩れ去った印象である。日本にとってそれはまさにダブルパンチであり、史上最大級の自然災害であると同時に近代文明の災害であることを思わせた。
この歴史的な大事件をどうみるか、日本の総合雑誌は一斉に特集記事を編集した。そして多くの論者が意見を述べているが、その最大公約数的なポイントを私なりに抽出すれば、次に3つになろうかと思う。
第1は、これを歴史的な転換点と捉えていることであり、迷走日本、巨大借金日本にとって最後のパンチになるのか、これをバネに新生日本に生まれ変わるのか、その岐路に立っているという認識である。
第2は、その上で、今、為すべき事は元通りにする復旧や復興でなく、新しい社会、文明を創造することでないといけないという認識である。
第3は、これまでの科学技術至上・経済発展偏重の近代文明の延長線上ではなく、別の新しい文明、サステイナブルな「命の文明」であるべきだという認識である。
そして、元首相の細川護熙氏は、朝日新聞のインタビューに応えて、次のようにいっている・・・ 「単なる復旧、復興でなく、日本をリセットとして再生する覚悟」が必要であり、「新しい日本の文明創りといった大風呂敷をひろげなければならない」と。
我々もまた覚悟の時であり、我々なりに大小さまざまな夢のある風呂敷をひろげてみる時ではなかろうか。