52 世界に発信すべき「日本の思想」とは? 

「何処へ行った日本?」、「パッシングからミッシングへ?」
日本経済新聞の「中外批評」で小池洋次氏がこんなことを書いている。

「ミッシングという表現は、英紙フィナンシャルタイムズのコラムニスト、フィリップ・ステファン氏が、洞爺湖サミットの直前に使ったのが最初であろう。ポイントは、主に政治面で日本が何を考え何をやろうとしているのか分からないということにあった」。

そして「日本の存在をアッピールできるトップが少なくなってきたこと」を嘆き、それは「自己主張できないのか、自己主張すべき中身がないのか」と切言し、「対外発信力の弱体化」であるといっている。

このところ毎月開催している、わが「グローバルジャパン研究会」は、まさにそうした事態に対応すべく、世界に向けて日本が主張できる中身、コアになる思想ないしビジョンについて研究しようという試みである。八月の研究会ではトヨタ自動車の石坂芳男氏(元副社長・海外部門統括)から「世界170ヶ国にトヨタウエイをどう発信したか」を聞いた。そのシビアな体験からにじみ出る話は極めて興味深く有益で、そこには日本的な思想や知恵が、英語によるプレゼンテイションの形でいかに実践されてきたかをうかがい知ることができた。

小池氏がその必要を強調する「英語による主張と説得」は、経済大国日本を支えるビジネスマンやエンジニアの最前線では、おそらくトヨタの場合のように日々黙々と行われているに違いない。

問題は、それが日本では政治面や言論面でいかにも弱体だということではなかろうか。日本は東洋と西洋の知恵を併せ持つユニークで貴重な存在なのだ。そのコアにある思想を明確に認識し、理論武装して、自信を取り戻すことが喫緊に必要なことなのではないか。

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