新映像・DVDに「岩倉使節団の群像」を添付するために、肖像写真をなるべく多く集めている。そしてそれを一覧して思うことは、その風貌が概してなかなかカッコよく、凛として品位を保っているように見えることだ。それは何故か、志をもったサムライの姿、基本的教養と儒教的倫理を身につけ、礼節を重んじ、使命感にあふれ、公のために懸命に働く気概がそこにあるからではないかと思う。
いま、藤原正彦氏の「国家の品格」が百万部を越えるベストセラーになっているという。テレビのヴァラエテイ番組でもこの書が取り上げられて、若い世代のタレントたちが面白おかしく「品格」について、雑多な意見が交わしている。そこまでこの書が話題になる背景には、日本人がかつてもっていた美しきもの「品格」をすっかり失ってしまったことへの深い郷愁と強い反省が世代を超えて広く底流しているからに違いない。
藤原氏は「品格」を新渡戸稲造の「武士道」を範として、名誉や恥を重んじ、金銭に淡泊で、弱者に思いやり深く、卑怯をきらい、公のために命を賭ける覚悟のサムライに求めている。
今、平成の日本の現状をみれば、国家としては、経済偏重、市場主義万能、アメリカ一辺倒、個人としては、親殺し子殺し、無差別殺人、拝金主義、自己中心主義、モラルの欠如、そして若年層の無気力、貧富差の拡大など、そこに豊かさの中での頽廃現象を見て、それへの疑問、憤懣が一般市民の間にも澎湃として惹起しているからではないか。
「品格ある国家」であるためには、「品格ある日本人」が一人でも多くならなくてはならない。道義的な価値を上位におき、むしろ金銭や地位を低位において生きる精神、世のため、人のために働く、無形の価値、徳や美を重んじる人がふえなくてはならない。岩倉使節団とそれを巡る人々の肖像をみるにつけ、まず、われわれ一人一人が「凛として生きる品格ある日本人」であることを目指すしかないと思うのである。