「米欧回覧の会」編の記念すべき最初の出版物が刊行された。2001年11月に当会主催で行われた、岩倉使節団派遣130周年記念・国際シンポジウム「岩倉使節団の再発見と今日的意義」の報告書である。
私も、連休を利用して一気に通読した。それはタイトルの通り、数々の「再発見」を意味する刺激的で興奮を覚える時間だった。これは実に多彩な顔ぶれによる多彩な面からの発言集であり、岩倉使節団とその記録「米欧回覧実記」が、まさに「汲めども尽きぬ泉」であることを改めて認識させてくれた。私はこの報告書を読むことによって初めてシンポジウムに参加した思いがした。といえば奇異に聞こえるかもしれないが、全日参加しながらもいろいろのことに忙殺されていて、セミナーの内容についてはほとんど聴いていなかったのだ。そして最終日のフォーラムでは壇上で司会をつとめたものの、疲労と睡魔に襲われ実は朦朧としていたからである。
さて、読後の印象を一言でいえば、「読みやすく、面白い」ということである。何故か、一つにはリライトされて無駄が省け、内容が濃くなっていることがある。それにたとえば、今回のシンポジウムには少なくとも二人のユーモア紳士が登場した。お一人は大使五代目の岩倉具忠先生であり、お一人はボン大学のパンツアー教授である。その巧まざるユーモアに接するだけでも嬉しくなる。また、華やかなレトリックを駆使しての才気溢れる芳賀節も大いに冴えており、「今日的意味」についてのアイヴァン・ホール先生の米国政府への注文やヒュー・コータッチ卿のホンネの発言もエキサイティングであるし、川勝先生や藤井理事長の大提言もまことに貴重である。それはまさに絢爛豪華といっていい。
また、巻頭には、四日間の会場の雰囲気を伝える写真集があり、熱気溢れるメンバーのみなさんの活躍ぶりを想起することもできる。会員であるかぎり「読まざるべからず」、「蔵書の一つに加えざるべからず」の書としてこころからお奨めしたい。