ちょうど1年前、この欄で「小泉内閣と平成維新」と題し、ライオンヘアーをなびかせて雄叫びを繰り返す小泉首相に大いなる期待を寄せる一文をのせたのだが、このところの状況は残念ながら、かなり色あせたものになってきた。まさに正念場を迎えたといういうべきか。
その折も折、近未来シミュレーション「2007年合衆国日本州誕生す」が登場した。「文芸春秋」5月号に掲載された水木楊氏の小説である。それによれば、小泉内閣は2003年早々に崩壊し、続いて麻生太郎内閣、さらには鳩山由紀夫内閣が出来る
が、いずれも何もできず日本の病状はいよいよ悪化する。そして、2007年、尖閣列島に緊張が走り、遂に「自主独立党」を立ち上げた石原慎太郎と「自由民主同盟」を結成した小沢一郎の一騎打ちとなる。石原は「義」を掲げて軍備強化の独立路線を叫び、小沢一郎は「利」を掲げてアメリカとの合併論をうちだす
選挙の結果はどうか?国論2分と思いきや圧倒的多数で小沢が勝ち、めでたく日本はアメリカの51番目の州になるという次第。
いやあ、岩倉使節団の面々の顔が浮かぶ。岩倉、木戸、大久保、伊藤・・・とりわけ随行理事官・佐々木高行の言葉が想起される。「何事も欧米の風によらざれば、わが国の独立は出来ずとは、今日の開化家の思想なり、彼に降参し付属国となるなれば、苦心は無用、早く欧米州に熨斗をつけて渡す方安心ならん、その時にいたらば、真に日本人は死して後やむのみなり」
「第三の開国」期に、「第三の道」はあるはずだ。サッカー騒ぎも一段落の日本列島、一人一人が日本の針路について真剣に考えなくてはならない。7月の例会、松本健一氏を招いての「第三の開国と幕末維新」はその絶好の機会である。