7 国際的評価が待たれる「米欧回覧実記」

 「岩倉使節団の旅」と「米欧回覧実記」の全貌については、これまで日本でもほとんど知られておらず評価も低かったことはご承知の通りですが、海外でも事情は同じでごく一部の研究者以外にはその存在さえ知られておらず、アメリカで日本からの使節といえば、幕末の新見使節とそれに随伴した威臨丸を連想する人が多く、岩倉使節のことは視野に入っていないように思われます。

この3月に「岩倉使節の研究会」がプリンストン大学で3日間にわたって行なわれました。

日本近代史の第一人者マリウス・ジャンセン教授、木戸孝允日記の訳者でもあるシドニー・ブラウン教授、「実記」の英訳をすすめておられるマーチン・コルカット教授などを中心に20名程度の会でしたが、私もそこで映像「岩倉使節の世界一周旅行」(全10巻)のプレゼンテイションを行なう機会を得ました。2日にわたる長時間の上映でしたがみなさん大変熱心で、映像は視聴者に強い印象を与えたように思います。

日本があの時期、あれだけの大型使節団を派遣し得たということ、しかも「米欧回覧実記」という立派な記録を残したということはまさに驚嘆に値するものであり、それを知ることはとりもなおさず日本の近代史を見直し、日本人そのものを再評価するきっかけになると思われるからです。

いま、「実記」全5巻の英訳が進行中で1999年中には出版の運びになると予想されますが、その暁に始めて真の意味で、「岩倉使節団の旅」と「米欧回覧実記」が国際的評価の対象になるものと思われます。

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