このところ、20周年の記念行事に関連した歴史セミナーが増えて、毎週のように次々と人物が取りあげられデスカッションも熱気を帯びてきている。「岩倉使節団の群像」シリーズと「日本近代の群像」シリーズがダブルで同時進行しているからである。
すでに、横井小楠、井上毅を皮切りに大久保利通、原敬にいたるまで、18人の発表があり、明治から大正にかけての歴史が人物像を通じて生き生きと蘇ってくる感じである。そして、それを聴いていて痛感することは、「あの人がもう10年も生きていてくれたら」という思いであり、「もう一つの日本があったのではないか」という思いにつながってくる。「歴史にイフは禁物」は定説だが、私は敢えて「イフの歴史」を想定することも極めて重要であり、歴史から教訓を引き出す上で有意義であると思う。
現在、これらセミナーはまだ途上にあり、これから続々と重要人物が俎上にあがるのだが、現時点でもすでに大いに学ぶことがあり、わが日本近代史の重要な分岐点でテロという不条理な事件が歴史を変えてしまったことにやりきれない思いを抱かざるを得ない。
中でも特筆すべきは大久保利通、伊藤博文、原敬の三人である。申すまでもなく大久保は幕府を倒し維新政府を創り上げ「米欧回覧」の成果を基に、近代日本の路線をしっかりと固めた大宰相だった。伊藤は大久保の遺志を継いで近代的な「憲法」をつくり「議会政治」への道をつけた「明治国家の形成者」だった。そして原敬はその遺志を継いで「国際協調」と「議会政治」の実現に邁進努力した平民宰相だった。真の政治家の要件を考えるとき、この3人の履歴、思想、事跡を学ぶことは極めて有益である。とくに人間形成期に不遇・辛酸な体験をしており、その艱難辛苦のなかで鍛え上げられていることの重要性を思う。
会員有志の発表は来春三月まで続く。扱う人物は政治家だけではなく実業家、思想家、文学者など広範囲に及ぶ。興味ある会員はぜひ参加してほしい。