「幸福度」という言葉が最近目立つようになった。GNPやGDPでは測れない別の物差しが必要だという認識が高まっているからだ。世界各国のいろいろの機関でその数値化が試みられ、日本の内閣府でもこのたび130にも及ぶ項目をあげて指数化に乗り出した。一般市民も過日来、幸福を国家目標に掲げた小国ブータンから若き新婚の王と妃が日本を訪ねてさわやかな風を起こして関心が高まっている。
しかし、その幸福度、いざ測るとなるとなかなか難しい。よく使われる数値の中身をみてみると、平均寿命、識字率、就学率、就業率、それに離婚率や自殺率や政治的自由度などが加味されたりするが、幸福感という感触からすれば今一つしっくりこない。それではと、直接個人に「あなたは幸せと感じていますか?」と問いかけて集計しても、これまた漠然とし過ぎているきらいがある。
そんなことを思っているとき、トム・ラスとジム・ハーター共著の「幸福の習慣」なる本を見つけた。原題は「WELL BEING」だから、「よく生きること」、「良き人生」とも解釈できる。これは世界的に有名な世論調査会社ギャラップが行った膨大な調査に基づき書かれたもので、なかなか面白い。そこに「人生を価値あるものにする」要素として次の五つが挙げられている。
1.仕事に情熱をもって取り組んでいる。
2.よい人間関係を築いている。
3.経済的に安定している。
4.心身共に健康で生き生きしている。
5.地域社会に貢献している。
五つにしたことが解りやすい。ギャラップによるとこの要素は世界共通であり、国や地域によって異なることはないという。
そこで思うのだが、この五項目で、われわれも自身の幸福度を測ってみたら如何なものだろうか?そして、物や情報に溢れた平成の日本人はいったいどれくらい幸福なのか、に思いを馳せ、ブータンを連想させる「逝きし世の面影」(渡辺京二著)にみる江戸期の日本人と比べてみたらどんなものだろうか。