19 使命感

 平成日本が誇る豪華客船「飛鳥」は今年も百日間にわたる世界一周のクルーズに出かけ7月3日に帰国する予定ですが、私はシンガポールからシャルムエルシェイクまで乗船し、「岩倉使節の世界一周」について6回にわたりレクチュアをしてまいりました。

この航海には様々な楽しみがありますが、その一つはなんといっても人との出会いです。毎日三食、誰かと食卓を共にする機会があり、そこでは自然に会話がはずみます。いろいろの職業の方、全国各地の方、さまざまな人生を歩いてこられた方々との出会いは大変貴重なものです。

その中でも特に印象に残ったことを一つだけご紹介します。それは最近リタイヤーされたある病院の経営者・院長先生夫妻との会食のときでした。「もうほっとしているんです。ほんとに疲れました。毎日が恐怖という感じでした。なんとか、ミスもなく大事にいたらず引退することができました」、と心底からおっしゃるのです。原因は最近の医療ミスの続発に象徴されていることでした。医療制度の問題であり、モラルの弛緩であり、使命感の欠落です。とりわけ若い世代のちやほやされて育った医者に使命感が希薄なことです。「医者になりたくてなったんじゃないんです。使命感があってなったんじゃないんです。親にいわれ、富と地位に惹かれ、ただ勉強だけしてなった医者が多いんです」。

これは医者の世界に限らず、政治家、官僚,経営者、弁護士、ジャーナリスト、教師など、およそエリートたるものに使命感がありやなしやの問題に通底していることでありましょう。指導的立場にある者の使命感・・・それが今、最も問われていることではないでしょうか。

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