英書輪読会:3月部会報告「ハリス輪読会」

日時:2018年3月14日 
内容:1857年2月26日から3月31日までを読む

ハリスは日米修好通商条約の下交渉に入り、下田奉行との応接と要請等を記す。

(1)幕府が1856年2月、ロシアとの条約で取り決めた航海に必要な物資と石炭供給を米国にも許可すること。

(2)米国人が日本で犯した犯罪は米国領事の下で処断させること(後日、治外法権問題として大きな問題となるが、要請が異論なく認められたことにハリス自身が驚く)。

(3)1856年1月の日蘭和親条約12条と13条の条項(出島オランダ商館住居と土地貸借問題)を米国にも適用するよう求める。この条項は仮協約とされ幕府で批准されていなかったことをハリスが知らず誤解があった。
(『ハリス 日本滞在記(中)』(坂田精一訳、岩波文庫p201)の注記(一)により判明。)

(4)領事職権として全国を自由に移動できる旅行の自由を求める。

(5)通貨問題について重要な交渉が行われる。奉行が1954年、ペリーと締結された通貨交換で1ドルにつき1600文と定められたが正当でなく、米国金貨は日本金貨と、銀貨は銀貨同士で重さを量り、それぞれ目減り分15%を見込むと提案する。これに対しハリスは
①銀ドルは4800文に換算する。
②日本の通貨計量は5%差引くこと。
③貨幣の合金分は予め10%差引くこと。ハリスは自分の提案に基づく交渉を強硬に求める。通貨交渉は3月一杯かけ、20回もの応接と折衝がなされた結果、従来の銀ドル通貨1600文が4670文に換算され、約200%の割増となる形で決着する。この交渉中、ハリスは米国務長官からのハリス宛文書を奉行に披露。文書で国務長官は日本が米国との条約を回避した場合、議会は日本が抵抗できない措置をとれる権限を大統領に与えるという。ハリスはこの恫喝文書を奉行から幕府に告知させる。

(6)ハリスは江戸居住を希望する事由を文書で提出するよう求められ文書を提出。この間、下田に米商船が来航し船長夫妻と懇談したほか、通訳森山から幕閣の米国との条約問題の見解が賛否伯仲しているとの情報、下田奉行へのピストル進呈などが記される。今回の日誌を通して幕末の政治経済情勢に極めて重大な影響を与えた通貨交換の取り決めがなされた経緯を知らされる。
(大森東亜記)

 

 

 

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