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GJ研究会:9月部会報告「日本の通商政策とアセアン」

日時:2018915日(土) 13:30~14:30
場所:国際文化会館
演題:「日本の通商政策とアセアン」
講師:岩田 泰 氏(経済産業省通商政策局総務課長) 

米国のトランプ大統領か世界に向かってグローバル化を拒絶し、持論の保護貿易など「米国第一主義」を主張し続けている現在、我が国にとり今ほど近隣友好国のアセアンとの関係強化が国策としても重要になって来たことはない。経済産業省の組織の中の中枢とも云える通商政策局の総務課長として、また広く培われたキャリアからの視点でお話を頂いた。 

<最近の通商情勢>に付いて’80代貿易問題が世界的に吹き荒れていた時、グローバルに問題を解決する為にGATTがあり、次に来るメカニズムとしてGATTウルグアイラウンドが’86に始まり延々と続いたが‘95WTO設立につながった歴史を振り返ることから講演の口火を切られた。

ウルグアイラウンドがなかなか収束しなかった時期に、それを補完する意味で地域ごとに纏まって貿易の自由化をやろうとNAFTAEUが誕生した。アジアに目を向ければAFTAASEAN自由貿易地域)が’92に合意に達した。当時、米国のスーパー301条がよく議論になっていたが、現在は再び米中間の紛争が政治問題化している。

WTOが設立されてからは通商問題が政治問題化しないようになってきていたが、その間、日本のアセアン各国に対する通商政策は、主に*経済協力と*既に進出していた多くの日本企業に対する事業環境整備である。アセアン各国同士の経済格差のみならずアセアン各国の国内でも格差があり、国によっては国内産業保護を主張する声と自由貿易推進を主張する声との対立が見られたが、アセアン各国のリーダーは、強い意志で繋がって協力し合い共同体を創って行かなければ生きていけないという問題意識の下、強い政治的リーダーシップで共同体設立に導いた。ASEAN(Association of South East Asian Nations)は、「Association」という名の通り、緩い協力関係の構築を目指すものであった。アセアンが設立された’67当時の東南アジア地域では、ヴェトナム戦争が続いており、中国での文化大革命の影響も広がりを見せていた。アセアンは、当初インドネシア、フィリピン、シンガポール、マレーシア、タイの5カ国で設立されたが、互いに仲が良かったわけではなかった。ボルネオ島のサバ・サラワクの領土を巡ってインドネシア、フィリピン、マレイシアが争奪戦を繰り広げており、またシンガポールは’65にマレーシアから独立したが当時の首相リー・クワンユーとマレーシアの首相マハテイールとは反目しあっていた。自分達も喧嘩ばかりしないで外敵(共産主義国・中国)に対して立ち向かおうではないか(当時ASEANは反共の団体と言われていた)、当時は特別に経済の為でもなく、崇高な目標を掲げていたわけでもなく、兎に角仲間内の喧嘩は止めて一つになろうとしたのが’67にできたASEANであった。アセアンが纏まることによって大国に対するバーゲニング・パワーが持てるし自分達が中心となって世の中を泳いで行こうというのがアセアンの基本的な考えであり、最近耳にするようになってきたASEAN Centrality の考え方にもつながっている。

ASEANは、一朝一夕で今日のような共同体になったのではなく、輸入代替工業化の動きー>輸出志向工業化―>FTA->共同体へと紆余曲折しながら発展して行くのである。

アセアンの経済発展の流れに相俟って日本の関わり方も変わって行く。アジアが貧しかった頃は経済協力が主体であった。’90代にGreen Aid Planという、環境に着目したした経済協力があった。また進出した日本企業の原材料の現地調達の必要性に対してはサプライヤーを育てる目的でサポーティング・インダストリー協力を行った。アセアンの経済が徐々に発展してきた2000年代には、次の段階である“経済連携”へと進んでいった。2002年にシンガポールとEPAを結び、順次、マレーシア、タイ、インドネシア、ブルネイ、フィリピン、ヴェトナムとも結び、ASEAN全体ともEPAを結んでいる。ある程度EPAが進んでくると、お互いの市場を解放し合い、自由貿易を享受し合い、伸び行くアセアンの活力を民間ベースで日本の中に取り込んで行く段階に入ったと言える。次が産業協力の段階である。

日本がアセアンとの間で最近進めているスタートアップ協力の一環として、Start Upを使って日本のヴェンチャーがアセアンで活躍できるように支援し、また起ちあがった企業のスケールアップを図る様に地元の財閥や有力企業と手を組む事など仕掛けてバックアップを行っている。また、日本が既に直面している課題でアセアンが今課題となってきているAging Society,環境問題など、先んじて直面した日本の経験、知恵やknow howを活用できる面があるのではないか、と政府間交渉に留まらずビジネスと一体となった協力にも力を入れて取り組んでいる。

講演の最後に岩田氏が10年前に3年間総務部長を務めたERIA(東アジア・アセアン経済研究センター)について紹介された。ERIA20086月に東アジア経済統合推進のため、政策研究・提言を行う国際機関(「東アジア版OECD」)として日本が主導して設立した。
参加国はアセアン10カ国プラス日本・韓国・中国・インド・豪州・NZの6カ国(RCEPと同じメンバー)で、本部をジャカルタに置いた事が重要な意味を持つことになる。

この機関の運営は日本人が主体に行っているが、ジャカルタにいてアセアン外交の事を考えている人達がアセアンと共に考える、経済統合や貿易自由化を進める為の知恵袋として“一緒に考えよう”として創った組織である。通商交渉というとどうしても国対国の交渉で勝った、負けたのイメージが強いが、今やアセアンとの関係を考えるとき勝った、負けたではなく、皆がこの地域で勝つ為にどうしたら良いか、こういうことを考える際に、ERIAのような組織の意味があり、日本にとって通商政策の一つのツールとしてERIAという組織を設立したことには大きな意味がある。

今年の7月1日RCEPの閣僚会議が日本で初めて行われた。RCEPの閣僚会合がアセアン以外の国で会議が行われたのは初めてで、歴史的な事である。会議の冒頭安倍首相が岡倉天心の言葉を引いて、「Asia is One」とアセアン閣僚の前で話された。

今や時空を超えて「人、物、金」がコミュニケートする時代であり、新しい時代の通商政策が益々難しくなって来ている。昔の様にただ単に経済協力するだけでなく、政府間の交渉をするだけでなく、ERIAの様な国際機関を創って、産業協力をしながら皆でこの地域でWinWinの関係になる様に地域の為に何が出来るか、通商政策の進歩がアセアンという場で問われている。

岩田氏が講演の中で話された重要な点が今年の1月出された「不公正貿易報告書」の巻頭言に掲載されているので、ご参考まで参照させて頂きます。

「特定国との貿易に関して自国に不利な結果が生じている事のみを理由にして、相手国の貿易政策・措置を不公正と評価する「結果志向」は、客観性が欠如し、管理貿易に転化しかねず、反競争的効果をもたらしかねない。各国の貿易政策・措置の「公正性」は、結果ではなく国際的に合意されたルールに基づき、客観的に判断されるべきであり、適当な国際ルールが存在しない場合には、まずルールの定立を期し、国際ルールなしに公正・不公正を論ずべきでないという「ルール志向」が、本報告書が提示し続けてきた「公正性」であり、我々の依拠すべき原理原則(principle)である。」

(文責:畠山朔男)

 

GJ研究会:4月部会報告「21世紀からの日本への問いかけ」

2018年4月14日(土曜日)
時間:14:00~17:00
場所:国際文化会館

講師:石渡慧一氏(経済産業省 貿易経済協力局通商金融課、
貿易振興課(併任)政策審議室課長補佐)
プロフィール:国際基督教大学(ICU)卒、東京大学大学院卒  2013年 経済産業省入省、経済産業政策局企業行動課配属  2015年 通商政策局アジア大洋州課
2016年 貿易経済協力局資金協力課
2017年 現職 続きを読む GJ研究会:4月部会報告「21世紀からの日本への問いかけ」

GJ研究会:2月部会報告「不安な個人、立ちすくむ国家」

*日時:平成30年2月17日(土)13:30~16:30
*場所:国際文化会館セミナーE室
*演題「不安な個人、立ちすくむ国家~モデル無き時代をどう前向きに生き抜くか~」
*講師:菊池沙織氏(経済産業省 経済産業政策局 知的財産政策室 室長補佐)
<プロフィール>
*平成25年4月 東京大学法科大学院終了後 経済産業省入省、
資源エネルギー庁資源・燃料部政策課
*平成26年7月 経済産業政策局産業資金課・新規産業 室・企業
会計室総括係長
*平成28年7月 大臣官房総務課 総括係長
*平成29年7月~現職 経済産業政策局 知的財産政策室
室長補佐

平成28年に「次官若手プロジェクト」に同年五月に同プロジェクが発表した報告書「不安な個人、立ちすくむ国家~モデル無き時代をどう前向きに生きるか~」作成メンバーの一人でもある

<議事要旨>
経済産業省若手が、昨年5月に発表した報告書「不安な個人、立ちすくむ国家~モデル無き時代をどう前向きに生きるか~」について、入省5年目の菊池 沙織さんから、講演していただいた。日本は、世界一の健康寿命を誇る国になったが、高齢者の多くは働く意欲があるのもかかわらず、働く機会がなく、テレビを見て過ごす人が多い。終末医療についても、自宅で最後を迎えたいと多くの人が希望しているが、実際は、病院で亡くなる人が多い。

アメリカやフランスでは、近年、終末医療の看護体制を整備し、自宅で最後を迎えられるようにしている。また、フランスでは、胃ろう などの延命治療を行わず、患者が望む自然な死に方を是認する文化が定着している。母子家庭の貧困率は、世界でも突出して高い。非正規雇用の年収は低く、貧困が連鎖、固定化する構造になっている。若者に活躍の場が少ない。一言でいうと、わが国の社会システムは、個人の選択を歪めている状況にある。こうした社会の仕組みを抜本的に組み替える時期に来ているのではないか。例えば、一律に「高齢者=弱者」とみなす社会保障をやめ、働ける限り貢献する社会へ、子どもや教育への投資を財政における最優先課題に、「公」の課題を全て官が担うのではなく、意欲と能力のある個人が担い手になるなど、を進めてはどうか。これにより、個人の帰属、つながりを回復し、不確実でも明るい未来を実現すべきではないか。2025年には、団塊の世代の大半が75歳を越えている。それまでに高齢者が支えられる側から、支える側へと転換するような社会を作り上げる必要がある。そこから逆算すると、この数年が勝負。二度目の見逃し三振は もう許されない。

以上のような、菊池さんからの明快な提言を受けて、活発な議論を行なった。
終末医療については、患者が生きていることにより、妻が給付を受けるなどの事情もあり、そういったここの事情も配慮すべきという意見があったが、これに対し、制度設計においては、個人の選択を尊重しつつも、医療費の過重負担は、削減すべきとの議論もあった。子供を育てやすい環境をどう作るか。AIで、失業が増えるのではないか。ベーシックインカムの仕組みも検討すべきではないか。財政再建をどうするか。いずれの問題も、難しい問題であり、「公」に依存することなく、「民」の側からも、未来をどう築いていくか、一人一人の覚悟が必要ということで、議論を終えた。次回は、「21世紀からの日本への問いかけ」というタイトルで、同じく経済産業省若手の石渡 慧一さんから、世界と日本がどう関わるかという視点も含め、講演していただくことになった。(文責  塚本  弘)

<次回予告>
*日時:平成30年4月14日(土)13:30~16:30
*場所:国際文化会館、セミナーE室
*会費:@1,000円
*演題:「21世紀からの日本への問いかけ」
*講師:石渡 慧一

米欧亜回覧の会URL:http://www.iwakura-mission.gr.jp/
GJ研究会事務局:畠山朔男 hatakeyama@joy.hi-ho.ne.jp

GJ研究会:12月部会報告「IT大国フィンランドとシンガポールの同質性・異質性

*日時:平成29年12月16日(土)13:30~16:30
*場所:国際文化会館402号室
*演題:「IT大国フィンランドとシンガポールの同質性・異質性
―低成長下の幸福社社会か、高成長下の窒息社会か」
プロフィール:
1968年東京大学工学部都市工学卒、1968年通商産業省入省(塚本弘氏と同期入省                     1993年工業技術院技術審議官               1994年国際応用システム分析研究所(ILASA在ウイーン)同技術顧問(2009年まで)                    1995年東京工業大学院社会理工学研究科教授(経営システム・インステイチューショナル・イノヴェーション)          2009年同・名誉教授
2009~2016年シンガポール国立大学客員教授、                         2009~2016年フィンランドユヴァヌキュラ大学客員教授
2016年~同大学 研究教授

<講演要旨>
渡辺千仭氏のキャリアの中で2009年~2016年の8年間をシンガポール国立大学とフィンランドのユヴァニュキュラ大学の客員教授として過ごされ、今尚、ユヴァニュキュラ大学の研究教授としてご活躍されている氏が肌身で実感した両国の同質性と異質性に就いてICTの発達度(ITC世界ランク)と実質GDP成長率、幸福度・格差・出生率等との相関関係を示しながらIMF、World Economic Forum(WEF),The Earth Institute, ILO, WHO 等からのデータを駆使され、実体を浮き彫りにされた事は大変興味深かった。今回のテーマとなっているフィンランド、シンガポールがICT世界ランキングは1位と2位のデジタル先進国であるが、2006~2013年間の平均実質GDP成長率を見るとフィンランドが0.57%に対してシンガポールは5.85%と、説明された12か国中最も高いが、福祉・幸福度からは最低水準に位置し、反対にフィンランドは最高水準に位置する。スエーデン・ノルウエイ・デンマーク等北欧諸国はデジタル先進国に位置して居り、高福祉・幸福を謳歌するも何故かおしなべて経済は低成長である。これ等のデジタル先進国の、「低成長・高福祉」と「高成長・低福祉」の好対照は、デジタル経済化の「(GDPベース)成長の概念の変容」や「国民選好のシフト」に起因するのではないかと氏は指摘する。この点を氏は更に深堀して2013年と2016年のデータ数値の変化を示しながら両国の同質性の中でフィンランド、シンガポール共に初等教育、高等教育の質の向上に力を注ぎ、世界ランクのトップクラスに入っているのは両国ともに建国以来の政治的・経済的背景が起因していると氏の両国の“リーダーの足跡”の説明の中で触れている。ここでは詳細は省略するが気になる事は“人的資源”において2013年と2016年の比較ではフィンランドが2位―>1位に対してシンガポールは3位―>13位と落ちている。そして“国際競争力”においてはシンガポールが2位―>2位堅持しているのに対してフィンランドのそれは3位―>10位と低下させている。両国ともに初等教育・高等教育の質に於いて世界のトップクラスに位置しながら何故低下したのか?という疑問が湧く。氏はこの疑問に対して1)デジタル経済化の成長・競争力の概念が変わり、物差しを替えなければならないのではないか。2)ICTの高度デジタル化対応にシステムの齟齬があるのではないか。3)教育システムが高度デジタル化社会に対応していないのではないか。と答える。

別な観点から両国を比較すると、人口は両国ともに(2015年)5.5百万人と同じ、面積はフィンランドがシンガポールの約48倍、人口密度は(2013年)シンガポールの7,713(人/Km2)に対してフィンランドは18(人/Km2)であるが、フィンランドは生存を維持するためにコミュニケーション能力の発達の必要性から情報通信技術が発達したとも云えると氏は指摘。また、エネルギー自給率はフィンランドが50%(2011年)で原発及び世界初の核燃料リサイクル施設を保有しLNGや再生エネルギーに力を注いでいるのに対してシンガポールは1%(2010年)と化石燃料など殆ど輸入に依存している。大学進学率(含む短大)ではフィンランドが93%(2012年)に対してシンガポールは32%(2014年)と低いのには新たな驚きである。これ等の両国の差に就いて、氏は両国の“生涯教育システム”の違いにその解を見出す事ができると。即ちシンガポールでは幼児教育(生後2か月~6歳)から小学校に入る段階でテストがあり、ここの選定が生涯における進学の鍵となる。12歳で更に初等学校卒業試験を受けその結果で4年コースか5年コースに峻別され、16歳で普通教育認定試験に合格してジュニアカレッジに進学して上級試験を目指す17歳時に徴兵検査を経て2年間軍隊訓練に参加するが、進学者は延期も可能、いずれにしてもテスト、テストで、各段階で峻別され大学進学まで漕ぎつけるのは容易な事ではない。一方、フィンランドは0歳児~5歳児までの幼児教育含め、就学前教育、小・中学一貫教育(7歳~16歳)が全生徒に施され、17歳からの2年間、男子のみ兵役が義務付けられている。この2年間では礼儀作法やコミュニケーション能力が鍛えられ、それ以降の人間形成にも大いに役立つ。17歳からその後高校卒業資格試験として全国統一テストが行われ、その上に大学、大学院、博士課程と平等に道が開かれている。勿論授業料はただであり、給食費や図書費用なども奨学金でカヴァーされる。従って結果として大学進学率が高く、小学校の教師でも修士号を保有している事は普通の事である。氏の結論は、フィンランドの教育システムの狙いは①平等性②に生涯教育③分権化(自治体などに自由度を認めるなど信頼度が高い)に対してシンガポールの教育システムが歴史的に①生存のための教育であった事(1959~1978年)②効率的な教育に走った事(1979~1996年)③能力主義・上昇志向である事(1997年~)と指摘している。

前述したようにデジタル先進国の生産性低下について詳細説明へと話は進む。

デジタルサーヴィスから得られる「豊かさ」を「消費者余剰」ともいう。生産者余剰はGDPに織り込まれるが消費者余剰は織り込まれない。これを「非計測GDP(Un-captured GDP)」というが、この数値が年々増大傾向にあり、注目されている。

この理論を世界的に広めた3人を紹介。“The Great Stagnation(2011)の著述家Tyler

Cowen(George Mason Univ.),”The Second Machine Age(2014)の著述家Eric Brynjolfsson、MIT、Annie Lowrey(New York Times)彼女は“The Internet promotes a free culture, the consumption of which provides utility and happiness to   people but cannot be captured through GDP data that measures revenue.と述べている。

氏は計測不能=超機能(経済的機能を超えた)には「社会的・文化的・憧憬的・帰属的・感情的機能」があり、具体的には省エネ・Small is beautiful・エコ・クール・感性・PB・奉仕・詫寂など説明は進む。更にフィンランド、シンガポール両国がインターネット・非計測GDP・超機能が共進しながら、経済価値を超えた超機能を増大させ国民選好が変容して行き、またGDPの増大から非計測GDPの増大へとパラダイム変化を起こしている、と。ICTの総合レベル世界ランキングでは2013年以来フィンランドとシンガポールは1位と2位を分け合っている。主体別ICT利活用世界ランキングを見てみると個人使用では2016年はフィンランド6位、シンガポールが12位、ビジネス使用を見るとフィンランドが8位、シンガポールが10位、政府使用ではフィンランド21位、シンガポールは3位である。このことから見えてくることは、フィンランドはビジネス・個人主導であり、シンガポールは政府主導あること。また、ICTによる学習支援に関してはフィンランドが“生涯学習評議会(教育機関・労働組合・産業界・官公庁代表)主導で行っておりcustomer friendlyに対してシンガポールは”うるさい、いやならやめろ”式の教育省(MOF)が主導である点も興味深い指摘である。

氏は結論として次の5点を掲げ、本講演を締め括れられた。

  1. グローバルデジタルイノベーションは①デジタル化の進展、②パラダイム変化③国民選好の変容の3つのメガトレンドの共進サイクルの高度化シフトに符合
  2. フィンランドの低成長下の高福祉は、国民選好の超経済価値シフトに呼応する非計測GDP依存へのシフトに依拠。シンガポールの高成長下の低福祉は在来的なGDP依存共進サイクルへの固執に依拠。
  3. 世界的に消費選好が、超経済価値にシフトするなかで、フィンランドは低成長ながら海外からの収益を増大。逆にシンガポールは、高成長ながら国内収益を国外に流出。
  4. 政府主導の、多国籍企業依存イノベーションからの転換、官製国家形成軌道からの脱皮がシンガポールの次の発展の課題。
  5. フィンランドの全員参加型国家形成軌道は貴重な示唆。フィンランド自身も、世界の共進サイクルの高度化シフトを見据えた諸体系の再構築が緊要。                      以上(文責:畠山朔男)

 

GJ研究会:10月部会報告「グローバル時代をどう生き抜くかー最前線での経験を踏まえて」

 * 日時:平成29年10月21日(土)13:30~16:30

 * 場所:国際文化会館404号室
 * 演題:グローバル時代をどう生き抜くかー最前線での経験を踏まえて」
 * 講師:野口宣也氏
 * プロフィール:経済産業省には当会・副代表理事塚本弘氏と同期入省、
1996年退官
迄の28年間では重工業局、貿易局、生活産業局、工業技術院な
どで仕事され、
最後の五年間はアメリカ勤務を経験(1991年から3年間はサ
ンフランシスコで1994
年から2年間はニューヨークでそれぞれジェトロ所
長)最初の海外勤務は1977年か
ら3年2か月はパキスタン(イスラマバード)日本大使館勤務、1996年退官後日本IBMに入社、2005年までの9年間役員として勤務、退任。2005年から4年間は日本商品清算機構専務、2009年~2013年財団法人 日本車両検査協会理事長、退任

「グローバル時代をどう生き抜くか   最前線での経験を踏まえて」

学生時代、先輩から優を取るには、先生の説に逆らってはダメと言われていたのに、 丁寧に先生の説に反論した答案を出した。自信を持っていたのに、結果は良で、 ショック。通産省のとき、韓国の役人に輸出入取引法を教示。韓国は日本から実に多 くのことを学んだのに、今は平然と逆の証言をする。パキスタンに赴任前、外務研修 所で「政治と宗教の話をしてはいけない」「NOと言ってはいけない」と教えられた が、実際は全く違っていた。

OECD諸国書記官会議で米国のマハラック氏(その後駐日公使、駐ベトナム大使)と知り合い、親しく付き合った。(日経新聞 交遊抄)。特に、イスラマバードの米大使館焼き打ち事件の際は、外出できない彼を車の後ろに隠して支援した。アメリカのパキスタン政策は、原爆開発に関し援助を止めたり再開したり無定見inconsistentだった。出稼ぎ労働者の本国送金に頼らざるを得ないパキスタンの貧しさ、イスラム教学の高い評価を得ているパキスタンの誇り高さ。北朝鮮の外交官がエアコンを外交官特権で横流しする事件も当時すでにあった。日本の新聞記者のレベルの低さにも驚いた。園田特使の随行記者団に、パキスタンの記者との面談を設定しようとしたら、そんなことより麻雀卓を頼むと言われ唖然。また、パキスタンに出張してきた日本人新聞記者を自宅に招いて、パキスタン記者との議論の場を設けたところ、日本の平和憲法に関し、パキスタンの記者から、それで本当に自国の安全が 保てると信じているのかと追及され、しどろもどろになって説得できなくなった。 (出席者からのコメント。スイスに赴任した際、アパートを案内され、一番最初に連 れて行かれたのが、地下のシェルター。備蓄された食品を見せて、同じように準備し なさい、絶対に他人のものを当てにしてはいけないと言われた。自分たちで自国の安 全を守るのは当然なのに、日本は平和主義を口で唱えていれば大丈夫という幻想があ る)。

ビン・ラディンが射殺されたアッボタバードは、イスラマバードから50分ぐら いのところで、カラコルムハイウエーに向かう途中にある町で、何度も行った。パキ スタン軍は、決して親米的ではない。ジェトロ時代、赤澤璋一理事長からは「友と交 わるには須く三分の侠気を帯ぶべし。人となるには、一点の素心存するを要す」(洪 自誠の菜根譚)と教えられた。ジェトロサンフランシスコ所長のとき、相当米国通の 先輩が、米国の女性ジャーナリストから、ユー・ガイズ(you guys)と言われて逆上し たのに驚いた。カリフォルニアではごく普通の表現。トーク番組の面白さを知り自分 も出たいと思った。ニューヨーク所長のとき、日米自動車摩擦が勃発し、おかげで トーク番組にたくさん出演した。なかでもフィル・ドナヒュー・ショーで、思い切り しゃべった。アメリカ人はすべて白か黒かをはっきりさせたがるが、アメフトでも、 51対49と100対0では、勝ち負けの意味が全然違う。そんなことを日米自動車貿易摩擦 に絡ませてしゃべった。終わってから、ドナヒュー氏から、you did a good job と ハグされた。今に至るまで、日本の対外情報発信の絶望的不足には、がっかりしてい る。

日本IBMでは、アジアの代表としての意識を持って、頑張った。役所との関係に ついて、経済産業省との関係のために来てもらったわけではないとはっきり言われ、 利益相反の忌避が明確であることに感心した。現在価値を常に確認する人事評価、ス ピンアウトの奨励も印象的。日本国憲法については、第9条2項を削除し、国防軍を明 記すべし。高坂正堯著作集で高坂先生は「戦後50年だから、先の戦争への反省を述べ よと求められたが、そんなことは人倫の道に反する。いかなる戦争をしても、終わっ た後は、賠償と平和条約でピリオド。ノーサイド。」と述べておられる。高坂氏のよ うな現実的かつ柔軟な発想こそ現代に必要。米軍占領下で行われた厳しくかつ巧妙な 検閲について、明白な憲法21条違反だったが宮澤俊義氏は著書で一切触れず。(江藤 淳「閉ざされた言語空間」甲斐弦「GHQ検閲官」山本武利「GHQの検閲・諜報・宣伝工 作」では、GHQの検閲について辛辣な批判がある。)対中国では、「謝罪と反省が第 一」という伝統的な考え方は間違っているのみならず、日中関係の今後を考えるとき 非常に有害。日中間には「ゆがんだ鏡」が多すぎる。グローバル時代の現代は、同時 に複数の「正義」が併存する時代。それぞれの正義は対等で優劣つけがたい。だとす れば大切なのは、(1)自分の正義を明確に保持し主張すること(2)それでも自分と異な る正義を尊重すること(3)そのうえで両立できない異なる正義の間で折り合いをつけ る工夫をすることであろう。日本は(1)が決定的に不足しているのが大問題、これを 何とかしなければならない。(出席者から、日本の議論は、エッジがないことが多 い。バランス良くと考えているから、主張がはっきりしない。)日本のトーク番組は 中秋の名月を見上げて感想を述べ合う構造だ。そこには共感はあるが主張や対立がな い。(文責   塚本  弘)

GJ研究会:6月度部会報告「私の知っている孫正義+ロボットペッパー(Pepper)」

2018年6月16日(土)14:00~17:00
場所:国際文化会館 404号室
演題:「私の知っている孫正義+ロボットペッパー
(Pepper)」
講師:井上篤夫氏 & 布和賀什格氏(You Teacher CEO)

今年、アメリカのタイム誌は「世界で最も影響力のある100人」に孫正義を選んだ。ソフトバンクは最近、銀河系宇宙論をビジネスの世界に展開する「群戦略」を発表、世界一の企業群を目指している。孫正義は平成の渋沢栄一か? 岩崎弥太郎か?

「孫正義は一体どんな人物か。」当会員、作家で30年以上孫氏を追いかけ続けている井上篤夫氏に語っていただいた。なお、井上氏の講演の後、ソフトバンクの重要な戦略プロダクトの感情認識ヒューマノイドロボット:ペッパー(Pepper)についてモンゴル出身の起業家布和賀什格氏にAI時代のロボットアプリを熱く語って頂いた。

「講演要旨」
井上氏が最初に孫氏にインタビューしたのは30年前の1987年。その時の孫氏に衝撃的なオーラを感じた。 マイクロソフトの創業者ビルゲイツをインタビューした時に同じ様な強烈な印象を持った。孫氏は当時、既に自分達がナンバー1を狙うべき分野や業種、その将来性などについて理路整然と熱っぽく語っていた。孫氏は常に父親を尊敬しており、「親父から集中力、負けじ魂そして愚直さを学んだ。

親父は子供を心の底から徹底的に誉めちぎり、お前は天才だ! 世界一になれる。と言い続け子供のやる気を育てた。」と語っている。孫氏はアメリカが大好きで「アメリカに来るとワクワクして元気になれる」と常に言っていた。カリフォルニアのバークレー校に留学して猛勉強し、教授陣からリーダーになる素質があると高く評価された。孫氏は「僕を作ってくれたのはバークレー校だ。 ほとんど全ての事をバークレーで学んだと言っても良いかもしれない。」と語っていました。孫氏は、当時画期的アイデアである「電子辞書」の特許を取得したのはバークレー校在学中であった。この特許を売却した資金がその後のビジネス展開の源泉になった。最近、ソフトバンクはアメリカの携帯大手スプリント社を買収、サウジアラビア等と設立した10兆円規模の「ソフトバンクビジョンファンド」、「原発200基分。ソフトバンクとサウジアラビアが21兆円の太陽光発電計画」、英国の世界的半導体メーカー「アーム社」の買収、人型ロボットペッパーなどあらゆる物がインターネットに繋がる「IOT」にビジネスを展開。今や日本を代表する事業家と言っても良い。

しかし、孫正義はさらに大きい夢を持っている。「30年後にはグループ会社5000社、時価総額200兆円を目指す。300年先を見据えた経営をする。 世界一に向けて頑張ります。」と公言する。

「感情認識ロボットペッパー(Pepper)の活躍分野について」講師:CEO布和賀什格氏

人材育成について、ソフトバンク育英財団やソフトバンクアカデミアを展開。「高い志」「異能」をもつ若者の自らの才能を開花できる環境を提供して人類の未来に貢献する。 モンゴル出身の事業家布和賀什格氏はソフトバンクアカデミア出身の第1期生で孫正義氏と面談して選抜された。同氏はロボットペッパーのアプリ開発ベンチャー「You Teacher社」を立ち上げた。彼はこれからはAI時代で、感情認識ロボットペッパーの社会的活躍は多岐にわたり、介護、医療、教育、産業等あらゆる分野で活躍できると熱く語った。(文責:小泉勝海)

 

GJ研究会:9月部会報告「-私見―米中のはざまで期待が高まる日本の賢慮」

平成29年度9月グローバル・ジャパン研究会 定例会

  • 日時:平成29年9月16日(土)13:30~14:30
  • 場所:国際文化会館401号室
  • 演題:「-私見―米中のはざまで期待が高まる日本の賢慮」
  • 講師:栗原 潤 氏(国際政治経済研究者)

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GJ研究会:7月部会報告「平成時代をふりかえる~天皇退位問題を中心に~」

7月度部会報告

  • 日時:平成29年7月15日(土)13:30~16:30
  • 場所:国際文化会館401号室
  • 演題:「平成時代をふりかえる~天皇退位問題を中心に~」
  • 講師:片山杜秀氏
    プロフィール:
    思想史研究者、音楽評論家
    2013
    年慶応大学法学部政治学科教授
    著書:「近代天皇論」(島薗進氏との対談、2017年集英社新書)
    「近代右翼思想」(2007年講談社選書メチエ)
    「未完のファッシズム”持たざる国”日本運命”」(2012年新潮社、2011年司馬遼太郎賞)
    「クラッシック迷宮図書館~片山杜秀の本3」(2010年アルテスパブリッシング)
    「見果てぬ日本~司馬遼太郎・小津安二郎・小松右京の挑戦」(2015年新潮社)
    他多数

     

    慶応大学教授片山杜秀教授から、以下のような講演、質疑応答があった

    平成元年は、1989年で、ベルリンの壁が崩壊した年。あれから、四半世紀が経った。

    ソ連型社会主義は行き詰まり、先進国の資本主義も格差拡大で、成長モデルを見失っている。そうした中で、中間団体と中間層が弱体化し、良識、常識、教養が崩壊しつつある。
    情報の多元化、劣化、発信源の無際限な拡大が促進され、価値観の局限化が進んでいる。

    日本では、自民党、民主党、都民ファーストなどが、圧勝しては、前との大胆な「切断」を作り出す。「切断」には、価値の問題だけでなく、人の問題もからむ。こうした経過の中で、国民という土壌が崩壊し、国民国家としてのまとまりが危うくなってくる。まとまり維持の最後の仕掛けが、宗教団体であり、国民の束ねの象徴としての天皇と言えよう。

    天皇像に関し、日本会議は、天皇の存在そのものが神聖としているが、今上天皇は、象徴として国民に承認されるためには不断の行為を通じ国民の理解を得ることが不可欠ということを平成28年夏のお言葉で明らかにされた。
    この「お言葉」ほど、戦後民主主義と象徴天皇との関係について、突き詰めて語られたものを他に知らない。
    民主主義の純粋型では、構成員のすべてが対等な民衆の一員であることが求められる。

     

    そこに「神」や「神」の片鱗を有する者がいてはならない。それでも民主主義世界に天皇がいるとすれば、その天皇は、人としてほかの国民から敬愛され信頼される特別な人であると不断に認証され続けなければならない。
    「お言葉」では、国民とふれあう行為を不断に続けることでただひたすら一個の人間として国民に認め続けてもらい皇位を保ちうる存在が象徴天皇であると述べられたと理解している。尊皇思想の中心であった水戸学の会沢正志斎は「新論」の中で、日本は、尊皇攘夷を目指すべきであるが、当時の国力では、欧米列強を追い払って、攘夷をやり遂げることは不可能なので、取りあえず
    文明開化をして、チャンスがあれば、攘夷をすればいいと提言している。

    そして、正に尊王攘夷の考え方で、太平洋戦争まで、突き進んで行った。その後、発展してきた今日の日本の中に、「神権的国家」「尊皇国家」の復活を唱える動きがあり、その方向で進むと、会沢正志斎の予言が二度当たるという
    ことになりかねない。これに、抵抗しているのが、戦後民主主義的象徴天皇像を突き詰めてこられた今上天皇その人であるように見えるところに、日本近代の壮大な悲喜劇があるのではないか。五箇条の御誓文の本質は、神がかった神国思想の否定だと思う。
    明治天皇の膨大な和歌も民と共感共苦をともにするお考えの表れであろう。

    「近代天皇論-「神聖」か「象徴」か」(集英社新書)の結語において、「象徴天皇制の虚妄に賭ける」というタイトルにしたのは、丸山真男氏が「戦後民主主義の虚妄に賭ける」と言ったことを踏まえ、ハードルは高くても、これに挑戦していくべきと思って、
    このタイトルにした。
    民主主義と天皇制は、究極的相性は、よくないだろう。
    しかし、近代民主主義国家として今のところもっとも長続きしているのは、極端に傾かず王室と民主主義政体を両立させてきたイギリスであるという歴史的事実もある。

    (文責 塚本 弘)

グローバル研究会:5月部会報告「国際社会から見た日本と今後の進路」

グローバル研究会:5月部会報告
日時:平成29年5月20日(土)13:30~16:30
場所:国際文化会館401号
演題:「国際社会から見た日本と今後の進路」

講師:佐野利男氏 続きを読む グローバル研究会:5月部会報告「国際社会から見た日本と今後の進路」

グローバルジャパン研究会:3月部会報告「ガンデイーと近代~コンヴィヴィアリテイを軸として」

日時:3月18日(土)13:30~16:30
場所:国際文化会館401
講師:石井一也氏(香川大学法学部教授)

「近代」における人類による経済発展は、未曽有の物質的豊かさを実現したが、同時に資源の枯渇と環境破壊を伴い、幾多の生物種を絶滅に追いやるプロセスであった。本報告では、こうした時代におけるガンディー思想の意義をイヴァン・イリイチのいう「コンヴィヴィアリティ」(自立共生)の概念を軸に検討したい。 続きを読む グローバルジャパン研究会:3月部会報告「ガンデイーと近代~コンヴィヴィアリテイを軸として」